【d!】春雷の喝采を【演劇部企画前編】 (ページ13)

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優秀な両親から普通に生まれて、どれだけ私に特別な才能があったら、と思ったことなんて数えきれない。

私と同い年、もしくはそれ以下の子がテレビで活躍して、両親は普通のサラリーマンと普通の主婦。それを見てなんとも言えない気持ちになって。

子供の頃は両親が有名人なことに誇りを持っていたけど今では隠したくて隠したくて堪らなくて誰にも言っていない。

「……才能なんて、この世にはないと思っとる」

『………』

テレビの中で人は喋る。「才能などない」なんて。綺麗事に吐き気がしたけど先輩は真剣そのもので、思わずピリドットの瞳に見入ってしまった。

すると心地よい体温に包まれて抱きしめられたことにようやく気がついた。先輩の匂いが服に移るような気がして少し気恥ずかしく思っていると頭をポンポンと撫でられる。

「…綺麗事言う俺、嫌い？」

『…え、ぁ…え、？？』

「……。…Aめっちゃ演技上手いやんっ！」

『へ…！？』

いきなり体を離されて両肩を掴まれたかと思うとすごいすごい、となぜか絶賛の嵐。

もしかして、と今しがた見ていた台本に視線を落とすと私のそして先程まで先輩がしていた台詞と行動がそこには書かれていた。

「いやー、もし部員が揃ってたら優勝待ったなしなんやろなぁ」

『……うぅ…恥ずかしい……』

「え、お腹痛いんか！？」