梅結び (ページ4)

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和の待つ病院に走った、
いつもは連絡をするけど、その時間すらも惜しくてただ走った。走った、できるだけ早く。

息を切らして病室に駆け込むと、和はちょっと驚いた顔で俺を見て、ちょっと笑った。

「仲直りできた？」
「うん。」
「よかったじゃん。」

和の手を握った、そのまま肩を撫でて、頬を触って、彼を抱きしめた。骨っぽくてゴツゴツした身体。
薬の匂い、
電子音。

「どした？」

和の声と吐息が耳を揺らした。
ぬるい体温が、俺の首筋をじんわりと温める。

「和、なんか話して。」
「何かって言われても困るわ。今日のあなた変よ。」
「怖い。」
「なにガキみたいなこと言ってんのよ。しっかりしろや。」

和が居なくなったら、
この温もりも、たわいのない話も、なんも無くなるのか。
過去の思い出に縋って、それを忘れないように必死にもがくことしかできなくなるのか。

「和、」
「ん？」
「いなくならいで。お願い。」
「いなくならないよ。遠くに行くだけ。」
「遠くって、どこ。」
「歩いては行けないとこ。」
「やだ、よ。」
「ばーか。」
「バカだもん。」
「ね、智。」
「…」
「いっこ、お願いがある。
俺が遠くに行ったらさ、

和はコソコソと俺の耳元で内緒話をした。
そして最後、愛してるよとそう言った。
俺も愛してる、さ。
俺の愛だけでは彼の魂を現世に止めるには至らず。
この話をした３日後に、和は遠くに行ってしまった。
歩いては行けない遠い場所に。