梅結び ページ1
いつかじゃなくて、今会いたいな。
夜寝る前って色々な後悔が頭を埋め尽くして、何だかワーって気持ちになる。
俺の友達のなかで、唯一大学卒業してる翔ちゃんってのがいるんだけど、翔ちゃんが夜はナンチャラ神経が乱れてるから気分が落ち込みやすいんだよって教えてくれた。
ホットミルクを飲むといいよ、って翔ちゃんが言ったから、俺はその通りにする。
そしたら本当にすぐ眠れたから、やっぱ翔ちゃんはすごい。
俺はスマホなんかよりも翔ちゃんのことをずっと信頼してるから、彼の言うことを全部信じた。
翔ちゃんはいつだって正しいし、馬鹿な俺の道を正してくれる。
母ちゃんも「櫻井くんとは仲良くしときなよ」と言っていた、気がする。
だからか、翔ちゃんには何となく逆らえないし、
翔ちゃんの言うことは、俺にとっては半分命令というか、予言めいたものに思えるのだ。
翔ちゃんがある時言った。
「かず、もう、あんまり、長く無いって、」
その大きな目に涙をいっぱい溜めて、
ひどく悲しそうにそう言った。
「ながくないって？」
俺の声は、なんだか老人みたいにしゃがれてて、
変な声って笑おうとしたのに
目の前の翔ちゃんは悲しそうに首を振るだけだった。
「長く無いって、なに？」
ちゃんとした声が出た。
翔ちゃんの丸い頬が、キラキラ光ってる。
涙で、濡れてるのだ。
「…もう、死んじゃうって、こと」
その時、俺は生まれて初めて翔ちゃんの頬をぶった。
殴った手のひらよりも心が潰れそうなくらいに痛くて、今にも窒息するんじゃないかって不安になる。
でもそれ以上に、
煮えたぎるような怒りが俺を支配していた
「和が、和がいなくなったら、全部、翔ちゃんのせいだよ…？翔ちゃんがそんなこと言ったから、！」
俺にとって翔ちゃんの言葉は予言だから、
予言に似たものだったから、
見当違いにも翔ちゃんのことを責め立てた。
翔ちゃんは何も言い返さなかった。、
「ごめん。
本当に、ごめん。
こんなこと言って、ごめん…」
泣きながら、そう言うだけだった．
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作者名：なむなむ | 作成日時：2023年7月14日 22時
