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「A」
「はい、」
「大丈夫か?」
「何がでしょう…?」
「体とか」
「体?」
「痛いとことか…」
思わぬ気遣い。
優しい。そしてかわいい。
あなたが全部全部丁寧にしてくれたからどこも不調はないですよ〜なんてね。
「大丈夫ですよ、ありがとうございます」
「よかった」
お前いまぼーっとしてたからどっか悪くなったかと思ったわ、と笑う。
いちいち笑顔が可愛いからやめてほしい。
この人の一挙一動でこの人を好きになりそうで怖い。
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「あ…雪見だいふく!」
駅まで歩く途中、さっきのコンビニを通り過ぎた時にふと思い出した。
「食べるの忘れてたな」
「はい…」
「そんな残念かよ」
「だって好きだし」
せっかく買ってもらったのに。
「…また来たらいい」
…行くじゃん今度。
行くじゃん、セックスしに。
きっとユンギさんにとって、あくまで目的は行為で雪見だいふくはそのオマケね。
「金曜日まで食べないでくださいね!?」
「どーだろ、なくなってたらすまん」
「むり。そうなったら倍にしてもらいます」
「そんな食べんのかよ」
う、いまちょっと引かれた?
…食べすぎる女の子は可愛くないだろうな。
「…好きなものはいくらでも食べれるし」
ぼそりと呟くと、ほー、とだけ答えて。
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人が1人もいない駅に到着した。
「じゃあまたな」
「はい」
ユンギさんの元を離れ改札へ向かおうと足を向けると、腕を引かれた。
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何か言いたげな表情で私を見て、
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「…気をつけて」
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私の頭をぽんぽんと優しく叩く。
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「…ぇ、」
…やめてよほんとに。
そんな優しそうな顔しないでお願い。
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心の奥がきゅってなったよ、
「…気をつけます、」
私の頭から手を離すとフッて笑って私に背を向けた。
…心臓の音がうるさい。
改札まで走ってホームへ駆け上がる。
まだ止まらない心臓の音が、
誤魔化すなって言ってる。
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セフレに恋愛感情を持ち込んだら負けなら、
私は負けだ。
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「あんな顔されて好きにならない人いる…?」
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作者名:まふゆ | 作成日時:2018年11月29日 1時