ノスタルジア 3 (ページ30)

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どこか薄ら感じていた違和感を、今まで俺は勘違いだと見過ごしていた

彼が与えてくれる優しさも温もりも全部本物やって信じたかったから

でも数年経ってやっと真実を聞ける事が出来て

俺が築き上げたものは全て崩れた

そして空っぽになってやっと今、まとわりついていたものから解放された気がした

「俺かてあんな事したくなかったわ‥‥

でも、必死で頑張ってきたもんを失う怖さ、まだ高校生だったお前に分かるか？」

少し震える声

必死こいて言い訳を並べる彼

kj「なんやねんそれ‥‥」

彼は、あの頃となんも変わっとらんかった

kj「そうやって自分の事正当化して、適当な事言って全部擦り付けて
俺が何も感じんと思ったか？
なにが『失う怖さ』や、笑わせんな！

結局、俺や兄貴からも逃げて適当な相手見つけて結婚したんやろ！？
そんなん自分自身からも逃げとんのと一緒やん！！」

彼は弱かった。だから自分を貫く事すら出来へんかった

「お前に何がわかんねん！

俺はただ単に真っ当に生きたいだけや！」

『真っ当』ってなんや

同性を恋愛対象にする事が真っ当やないって言うなら

叶わぬ想いに違う誰かを利用するんわ真っ当やって言うんか？

kj「あほらし‥‥」

溶けきった氷ですっかり薄まってしまったハイボールを一気に飲み干して俺は立ち上がり

俺を見上げる彼に言い放った

kj「なんでアンタみたいなん好きやったんやろ‥‥

もうアンタを好きやった理由が思い出せんわ」

「康二‥‥？」

kj「これからも、兄貴の事宜しくお願いします。

もう、二度と会わんと思うけど‥‥」

俺はそう言い切るとそのまま二次会会場を後にした

あんな風に言われて、やっと目が覚めた

彼と再会して良かった。結果は最悪やったけど、いつまでも過去に囚われて彼の影を無意識に追ってしまう事ももう無くなるだろう

本当の意味で彼と決別できた

これで良かったんや‥‥