ノスタルジア 3 (ページ29)

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今思うと、彼は弱い人やったんかなって

自分が当時の先生くらいの年齢になって気づいたんやけど

彼は彼で必死で守りたかったモンがあった。それは俺やなかった。

ただそれだけやったんかなって

あの頃に比べたら、彼に対して嫌悪や恨みは薄れた気がするけど、やっぱり過去の記憶は拭えなくて

口端が引き攣るような笑しか作れんかったけど

kj「おん、久しぶりやね」

俺がそう返したからなのか嬉しそうに隣の席に座った

「会わんくなって何年になるん俺ら。当時の先生はまだ学校におるん？」

kj「さぁ、俺卒業した後引っ越してから帰っとらんもん」

そう、俺は何かと理由を付けては実家にはあまり帰らずにいた

その事実に、彼は驚きと困惑が入り交じったような顔をした

「そう、なんや‥‥。やからお前の兄貴が寂しいって零しとったんやな。ほんまアイツは相変わらず弟大好きやな！」

持っていたビールジョッキをぐびぐびと飲み出した

kj「そやで、兄貴のブラコンは健在や。やから‥‥そんな弟に手ぇ出したんも、手酷く裏切った事も兄貴に黙って
アンタはあっさり他の人と結婚したんやな‥‥」

空気の流れが一瞬にして変わった

彼は引き攣る顔で言った

「康二、そんな言い方ないやろ？
まぁ、兄貴に内緒やったんはアカンかったかもしらん。でも話したとこでアイツが許すと思うか？」

兄貴が俺の恋愛にとやかく言うような人では無いことは俺も彼も知ってる

兄貴は親以上に信頼しとる

kj「ちゃうやろ？
許すとかやなくて、あんたが兄貴に嫌われたなかったからやろ？
ほんまは好きやったんと違うか？兄貴の事‥‥
そんで俺は、ただの代役やったんやろ？」

そこまで言うと図星をつかれたんか険しい表情になった

その変わりように疑惑だったものが確信へと変わった

「だったら何やねん‥‥アイツは完全なノーマルやったから想い続けとったって意味ないねん

でも苦しくて、どうにかしたくて、そんな時にアイツによう似た容姿で俺に好意持っとるの見え見えな奴が現れたら利用したくなるやろ」

そんなとこやろうと予想はしてた

でも実際に本人から言葉にされると結構くるもんがあって

涙が出そうなのを必死で噛み砕いた

kj「ほんま最低やなアンタ。」

全てがもうどうでもよかった