ノスタルジア 3 (ページ26)

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応接室には革張りのシングルソファが4つ、真ん中のガラステーブルを囲むように設置されてて、奥の席には校長先生と教頭先生が座っていた。傍には学年主任の先生もいる

kj「あ、あの‥‥」

校長先生たちと向かい合うように立たされた俺

俺の隣に立つ彼は俯き、目を見開いたまま一点を見つめている。その顔色は青いというより、白に近くて震えていた

(あぁ、バレたんや‥‥)

自分でも驚くほど冷静にこの現状を受け入れていた

「うちの生徒の保護者さんから連絡があってな、手を繋いで繁華街のほうへ歩いて行く2人を見かけたっていう報告を受けたんだが‥‥」

校長先生は普段から割と温厚な人柄やったけど、当時の校長先生は怒りや悲しみや絶望感、色んな感情をぐっと堪えて言葉を選ぶように話してたんが印象的で

それがやたら怖くて、手の震えが止まらんかった

「恋愛するのに性別云々はとやかく言いませんが
教師と生徒という立場では見過ごす訳にはいかんのよ」

あの頃の時代では少々珍しいぐらいに理解ある校長先生やったけど、最良で最もな意見やと思った

俺かてこの関係が許されるものでは無いと思っとった

やけど好きやからしゃーない、両想いなんやから付き合うのが普通やろって適当な言い訳作って無理くり自分に言い聞かせとった

ほんで大事な部分は気づかんフリ。見て見ぬフリ‥‥

「向井くんは今が1番大事な時やで？進学決まったんやろ？」

中学の頃から憧れてた美容師になるべく、俺はこの春から都心の美容師専門学校への進学が決まっとった

だから今ここで問題が公になるのは俺自身も学校側も避けたいとこやった

kj「でも俺は‥‥」

それでも俺は先生が好きで別れたくなかった

俺の卒業まで目立った行動さえしなければ許される事やと本気で信じとったのに

そんな考えを持っとったんは、どうやら俺だけみたいやった