ノスタルジア 2 (ページ33)

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ru「ごめんなさい…。でも僕は、ただダテさんの役に立ちたかっただけで、勉強したくなかったとかじゃなくて…」

肩を竦め、手元を見つめたままボソボソと話すラウール

今度は少し呆れ気味に溜息が漏れた

俺は厨房へと向かうと冷蔵庫の扉を開けた

野菜や仕込んだ食材やらが敷き詰められた業務用の冷蔵庫の真ん中の段には、朝仕込みをしながら作った小ぶりなカクテルグラスに入ったパンナコッタが9コ、ラップを被った状態で並んでいる

俺はその1つを取り出して、一緒に市販品の苺ソースを手に取ると、作業台の上で簡単に盛り付けを始めた

カクテルグラスに入ったままのパンナコッタの周りを縁取るように苺ソースで点を描く

その上を竹串で1周円を描くと、ハート模様のリースになる

そして真ん中にミントの葉を添えて、デザートスプーンと一緒にラウールの前に出すと

俯いていた顔を上げてキョトンとするラウール

dt「頭使うと糖分欲しくなるだろ？
ソースはまだ未完成だから、市販のものでアレだけど…」

そう言うとラウールは大きく首を横に振った

ru「いただきます…」

遠慮がちにスプーンを手に取り、1口くちに運んだ

俺もまだ食べてないからラウールの反応に内心ドキドキしてたけど

ラウールが口に入れた瞬間、大きな瞳をさらに見開いて

ru「美味しい！」

なんて、本当に美味しそうに言ってくれるから、さっきまで怒っていた事も忘れて声を出して笑ってしまった

dt「ふふっ、口に合って良かったよ。
本当ならこの上に乗るのは夏蜜柑のジュレだったんだけど、まだ冷めてなくてね…
だから、完成したらまた食べてよ。気晴らしに来るだけなら、いつでもおいで？」

そう言えばすっかり笑顔が戻ったラウールが『はいっ！』と100点満点の返事を返してくれた

俺には少し年の離れた妹が2人いて、2人とも俺を慕ってくれてるし、俺も妹達のことが大切だし可愛いと思ってる

ただ、俺は弟がいる環境を知らないから、ラウールみたいな少し甘えたな弟がいても良かったなってふと思った

こんな風に、俺の役に立ちたかったなんて言ってくれたらつい甘やかしてしまう俺は、もう既にラウールの兄貴になった気でいるのかも…