ノスタルジア 2 (ページ32)

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翔太にネクタイを返した日から数日が経った

改めてみんなとLINEグループを作り、小さな報告や何でもない会話の延長みたいなやり取りをするようにはなったものの

俺と翔太だけでのやり取りは未だ出来てない

お互い連絡するなんて言って別れたけど、きっとタイミングを見計らってるんだろう

俺もそうだから

だけど、今日はやっと翔太に連絡する口実が出来そうでソワソワしてる

dt「うん、美味い…」

小鍋でコトコトと煮込んだ鮮やかなオレンジ色のジャムは、いつも利用する青果店の店長から頂いた夏蜜柑で作ったもの

以前、翔太にも伝えていたデザートの種類を増やすべく、そして初夏に向けて夏らしいデザートをと考え

1番最初に夏蜜柑が浮かんで、ゼリーやシャーベット等、案はいくつかあった中で、パンナコッタの上にかけるソースにしてみようと思い立って休憩時間に早速試作を作ることにした

夏蜜柑の絞り汁に果肉と荒みじんにした皮と水と砂糖を加えて弱火で煮る

少量のゼラチンを加えて冷ませば緩く固まったゼリー状のものができるから、それをフォークで潰し混ぜる

少し形の残った状態にすれば面白い舌触りになるんだ

食べる人が楽しく美味しく食べてもらいたいからね

そう考えながら鍋の中の黄金色の液体をゆっくりとかき混ぜながら、翔太の顔が浮かんできて自分の口角が上がったのが分かった

ru「だーてさんっ！」

dt「ラウール！？どうした？今日はバイトいれてないはずだけど…」

今週はラウールの学校がテスト週間なため、暫くラウールはバイトを休む予定になっているはずだったのに…

ru「今日はテストだけなんで下校早いんです」

制服姿だということは、学校からそのまま来たんだろう

俺は盛大に溜息をついた後、カウンターの1席に座ったラウールを真っ直ぐに見つめた

dt「ラウール、学生の本業は勉強だよ？
どんなに店が忙しくてもテスト期間中にシフトいれるつもりは無いよ」

定休日明けは平日でも忙しくなる時間帯がある
それを知ってるから、良かれと思ってラウールはシフトを組んでない今日、わざわざ来てくれたんだろう

ラウールは想定していたものと違った俺の反応にシュンとなって肩を落としてしまった