_ ページ10
nb「はい、はい。じゃあまた後で…」
ちょうどその時信号が赤から青へと変わった
平日の日中でも交差点のある大通りは人で賑わっている
スマホを耳に当てながら、すれ違う人の波をすり抜けながら横断歩道を渡る
先輩との通話を終えてスマホをポケットに戻そうとした時、車道を挟んだ向こう側の歩道を歩く1人の男性に目が止まった
(えっ？)
彼は大きめの紙袋を下げて笑って歩いていた
隣を一緒に歩く誰かがいるようだけど、彼に隠れて誰か分からない
でも、彼は
彼の優しく笑うあの顔は
忘れたくても忘れられなかった
俺の大好きだった表情そのもので
あの時みたいに胸が締め付けられて、苦しくて、目が離せなかった
nb「りょ…た…」
何年振りかに、大好きで堪らなかった人の名前を呼んだ
たったそれだけで、鼻の奥がツンとして、目頭が熱くなる
何年も忘れたフリして蓋をしていた感情が蘇る
そしてやっぱり俺は涼太がまだ好きなんだと実感した
向こう側を歩く涼太は俺に気づいてなくて、話に夢中といった感じだった
10年振りに見た涼太は高校生だった頃に比べて少し痩せてて、大人っぽくなってた
あの頃は若干浮いてた落ち着いた雰囲気も10年たってやっと見た目が雰囲気に追いついたように思えた
涼太が俺に背を向け角を曲がった時、隣を歩く人物の姿が見えた
薄いピンクのシャツワンピースに身を包んだ、柔らかな栗色が上品なロングヘアの小柄な女性が涼太の隣を楽しそうに歩いていた
頭のどっかで、涼太はまだ俺の事好きでいてくれるんじゃないかって思ってた
でも違ってたんだな
10年間という時間の中で、間違いなく俺だけが取り残されていて、涼太はちゃんと自分の人生を歩んでいた
仲良さそうに並んで歩く後ろ姿が小さくなっていく
それを眺めながら、高校時代を思い出してた
穏やかな口調で俺の名前を呼ぶ声も
目尻の下がった笑い顔も
大人びた落ち着き払った雰囲気も
時々びっくりするぐらいのボケをかましたり
天然なくせにそれを認めない頑固な性格も
(戻りたいな…)
全部ぜんぶ手放したのは俺なのに
nb「何やってんだよ俺…」
涙が零れてしまいそうになって、俺は咄嗟に2人から目を逸らした
(もう忘れよう…)
フランスからいつ帰国したとか、隣の女性は恋人なのかとか
知りたいことは沢山あるけど
涼太はもう前を向いて歩いてる
俺も忘れなくちゃ…
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 647人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「SnowMan」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：shiro | 作成日時：2021年9月16日 22時
