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涼太がフランスへ渡ったという話を聞いたのは、涼太が行っただいぶ後に、俺の母親から聞いた
母親同士は昔から仲が良く、俺らが卒業後も連絡を取り合ったり出かけていたりしてたから
涼太の近況もその時聞いた様だ
涼太は卒業後、調理の専門学校へ進学した
そこで2年間料理の勉強をして資格も取り、卒業後、当時講師をしていた方の元で調理師として働き始めて半年以上経ったころ、講師の方の元教え子だった人がフランスで店を出すにあたって日本人のスタッフを探してるという話を涼太に持ち掛けてきた事がきっかけで
涼太はフランスへと渡ったと聞かされた
最初聞かされた時は夢物語でも聞かされてるのかと思ったけど、話の内容がやけにリアルだったし
その話を聞いた数ヶ月後に何年かぶりに涼太のお母さんにバッタリ会って、俺の母親と同じ事を聞かされたから
やっぱり本当だったんだと理解した
ついでに涼太の帰国の予定は無いとまで言っていた
あれっきり涼太の話は聞かされる事なく、俺も卒業して他県での新生活と環境に戸惑いながら日々を過ごしていたから、涼太の事も疎遠になった他の奴らの事もあまり考えなくなった
だけどやっぱり桜の季節になると思い出してしまう
最後に見た、悲しそうな涼太の表情を…
そして気がつけば10年の月日が流れていた
高校時代のクラスメイトが数人結婚したという事を風の噂で聞いた
いつの間にかそんな話が出るようになる程、俺も年取ったんだなって思った
この10年の間に俺にもそんな相手が居なかった訳じゃない
男女関係なくそれなりの付き合いはしてきたけど
どうしても長続きしなかったんだ…
いつもどこかで、涼太の存在があったからなのかな
俺は、歩道脇に植えられた少々貧弱な桜が、それでも綺麗な淡い色の桜の花を咲かせている光景を眺めながら横断歩道の信号待ちをしていた
ポケットに忍ばせていたスマホが小刻みに振動を繰り返しているのに気づいて、スマホを取り出すと
スマホ画面には会社の先輩の名前が表示されている
nb「はい、渡辺です。
はい、分かりました。今向かってるとこなんで、後30分ぐらいで着きます」
俺と先輩で担当している仕事の件で電話して来たらしい
仕事は人手が足りなくて忙しいけどやり甲斐はある
入社5年目で後輩も出来たし、重要な仕事も任されるようになったし、今は仕事1本で頑張りたい
そう思うようになった
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作者名：shiro | 作成日時：2021年9月16日 22時
