10年目 ページ8
あの日からいくつもの春が俺の横を過ぎ、そして新しい春がやって来た
街並みが少し変わって、あの桜並木の先には小さな公園が出来た
俺たちがいつも行ってたカラオケ店は2年前に閉店
未だに固く閉じられたシャッターには『テナント募集』の張り紙がされたままだ
俺は卒業後、無事大学に進学して4年後に一般企業に就職
3年間他県の支社での勤務を経て、希望していた本社への配属が決まり、実家からは離れてしまったものの、今も同じ会社で営業マンをやっている
アイツらとは、もう連絡は取っていない
原因は分かってる
散々みんなに責められたし
それに、あんな別れ方しといて今更どの面下げてみんなに会えっていうんだよ
そもそもアイツらだって俺に会いたくないだろうし…
涼太から逃げるように走り去ったあの日
俺は結局カラオケ店には行かなかった
行けなかったというほうが正しいかもしれないけど
涼太が俺の事好きだって言ってくれたのに
俺は気持ちに応える事もせず、人目や世間体が怖くて涼太の事を突き放したんだ
会わす顔が無かった
涼太への罪悪感でいっぱいで足がすくんで
カラオケ店の近くまでは行ったんだけど、それ以上先へは進めなくて、逃げ帰った
その後何度もふっか、照、阿部、佐久間から代わる代わる連絡が来た
俺を心配するメッセージに俺を責めるメッセージ
俺は全て無視した
いよいよ、俺らの関係も終わったなって諦めた頃
涼太からのメッセージがきて、その内容に俺は声を殺して泣いた
『翔太ごめん、俺のせいだよね？
俺の事は忘れてくれて構わないから、せめて他のみんなとは誤解を解いて欲しい
困らせてごめん』
それが涼太がくれた最後のメッセージとなった
俺は結局誰とも連絡は取らなかった、どこかでまたみんなと会えるとか勝手に思ってた
普通に何も無かったかのように『久し振りー』なんて笑って会えると思ってたんだよ
本当にバカみたいだ
何を根拠にそんな事思える自信があったんだろうな
3年後、涼太が海外へ行ってしまうと知ってたら
もっと早く行動にうつしてたかもしれないのに
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作者名：shiro | 作成日時：2021年9月16日 22時
