ノスタルジア (ページ30)

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sk「聞いて涼太！俺、初めて役名のあるキャラ演じられる！！」

dt「えっ…？マジで？」

sk「マジマジ！！あぁ～俺の夢がどんどん叶ってくよぉ！」

本当に嬉しそうに語る佐久間の声

スマホ越しでも佐久間の嬉しそうな表情が容易く想像出来た

佐久間は今、駆け出しの声優をやっている

大好きなアニメやゲームをきっかけにメディア関連の専門学校へ進学し、自分の目指す目標が定まり卒業後には声優の養成所へ進学し直した

そして声優関係の事務所に入ってからは名もない、所謂『ガヤ』と呼ばれるその他大勢の1人としての声の仕事が続いていたらしいのだが

連載アニメの役名のあるキャラの声を担当することになったというのだ

と言っても毎回登場する主力キャラではなく、1話に2、3セリフがあれば良い方というレベルで

それでも佐久間は声を震わせ喜んでいた

dt「阿部にはこの事話したの？」

sk「あーまだだった！！阿部ちゃんお祝いしてくれるかな」

dt「してくれるんじゃない？阿部と電話すると必ず佐久間の仕事の話があがるから、絶対喜ぶよ」

sk「んふふっ、そうだといいなぁ～
涼太は？涼太はもう日本には戻らないの？」

dt「え？何急に…」

sk「だってさー俺の勇姿を涼太にも見て欲しいじゃん！」

dt「帰国かぁ…。考えてもなかったなぁ」

フランスに渡った動機は翔太の事を忘れるためだった

だけど大好きな料理を作る事に携わり、夢中で働いていたら本当に考えることがなくなって

いつしか、単純に仕事が好きになってた

sk「俺さー、また涼太の作ったご飯食べたいんだよね！
最後にさ、阿部ちゃんと3人で鍋囲んで食ったの、あれマジで楽しかったし、美味かったなー！」

dt「あれは楽しかったなぁ。鍋なんて誰でも出来るけど」

sk「いや、涼太の味付けは最高だった！
鍋だけじゃないよ、今まで俺が食ってきた料理は全部美味かった！」

dt「そっか…」

佐久間が嘘つけない奴だって昔から知ってる

だから余計に全力で褒めちぎってこられると擽ったくて、つい口角が上がってしまう

こんなにも喜んでくれる人が、もっと増えてくれたら嬉しい

それこそ自分の手で喜んでくれる人が増えたら、どんなに幸せだろうか…

そう思うようになって翌年、俺は日本に帰国することになる