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10年振りに再会した昔の想い人は
あの頃の面影をそのままに、チャコールグレーのスーツが良く似合うビジネスマンとなっていた
ただ、俺の姿を見つけた途端、目を丸くして驚く姿だけは高校時代と変わらなくて
可笑しくて笑ってしまったけど、どこかホッとしている自分もいた
dt「いらっしゃい翔太。久し振りだね」
そう言えば、翔太は一瞬顔を歪め深く息を吸い込んだような素振りをすると
nb「あぁ、久し振り」
そう言って笑いかけてくれた
久し振りに見た彼の笑顔はぎこちなくて、会わずにいた空白の10年間の溝は、まだそこに存在しているのだと実感した
俺はもうずっと、翔太に対して後悔の念が消えないでいる
俺の小さな欲望が、翔太自身を追い詰めた
そして俺たちはバラバラになってしまった
それでも救いだったのは佐久間と阿部の存在
この10年間、年に数回ぐらいだけど2人とは連絡を取り合っていた
8年前、俺は翔太の事をいつまでも引きずっている自分が嫌で、翔太を忘れたくて翔太の居ない世界に飛び込んだ
俺が住み込みで働かせて貰える店はオフィス街から少し外れた場所にあった
人通りは多い場所だったからオープン当初からランチタイムもディナータイムもそれなりに忙しく
先輩と俺と現地で知り合ったスタッフの3人でスタートしたレストランも
気がつけば新店舗をオープンさせて、スタッフも10人以上いる大きな店舗へと成長していた
フランスにいる間、ただ夢中で働いた
衣食住には事足りてたし、物欲なんてほとんどなくて
気がついたら結構まとまった貯金が出来ていて
そんな時に数ヶ月ぶりに佐久間からの国際電話があった
sk「涼太っ！？」
こっちの時間は深夜1時すぎ
ということは日本は朝か…
ちょうどベッドに潜り込んでウトウトと微睡みかけていた矢先の電話に、少し怪訝そうに通話ボタンをタップすれば
弾けんばかりの佐久間の声に眠気が覚めてしまった
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作者名：shiro | 作成日時：2021年9月16日 22時
