side:fk ページ19
深刻そうな面持ちだったから、それ以上は流石に聞けなくて
舘はその後、他県へ引っ越していった
それから暫くは翔太以外の奴らとは連絡を取り合っていたけど、各々違う道へと進んだことで再会は結局果たせないまま
気がつけば10年も経ってしまっていた
それが何の因果か、昨日後輩宅へ向かう途中で翔太にばったり会ってしまった訳
2号店オープンを期に、前のアパート引き払って店近くに引っ越してきたんだけど
まさかの電車で1駅の距離に翔太も住んでいる事が判明した
運命だなって言ったら本気で嫌がるからシャンプーはサービスにしてやったよ
とまぁ、冗談はこのぐらいにして
10年振りの再会で翔太は俺を見るなり予想通りの反応をしてくれた
やっぱ気にしてたんだなって一瞬で分かったよ
だから俺はあの時の舘との約束を守るつもりで普通に声掛けてみた
あわよくばと思って、しれっとあの時来れなかった理由聞き出そうと思ったけど…
10年経ってもまだ言えない事なら、もう聞かない事にした
人間、どんなに心許せる相手がいたとしても隠しておきたい秘密のひとつやふたつ、あったって変じゃないだろう…
この10年で俺はずいぶん大人になったんだ！
俺が一方的に話してる間、翔太は何度か欠伸を繰り返し、仕舞いにはうつらうつらして
時々頭がこてんと傾いたり…
本気で寝始めたよ、この子！
kj「ふっかさーん、カラー剤の追加置いときますねー」
そこへ、裏で追加のカラーリングの薬剤を作っていた後輩スタッフの康二がやってきた
ちなみに、昨日は康二のアパートにみんなで集まって宅飲みだったんだよね
fk「サンキュー康二」
kj「あ、もしかして昨日ふっかさんが上機嫌で話してた高校時代のお友達さんですか？」
康二は関西出身ということもあってか関西独特の方言とイントネーションでの関西ノリに加えて人の懐へ入り込むのが抜群に上手い
nb「あ、そうです…」
初対面の人間には絶対接触しない翔太が、ものの10秒で康二と会話をしてる！
康二の人柄か…
はたまた翔太が年とって丸くなったのか…
どっちにしても、こういうやり取りを見られるってちょっと嬉しい
kj「へぇーそうなんや！ふっかさんに、こんなイケメンな友達おったなんて意外やわ！」
fk「おい！意外って言うな！！寧ろ高校時代は翔太より俺のがモテてたし！」
Kj「………いや、冗談きついて…」
fk「うをぉいっ！！」
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作者名：shiro | 作成日時：2021年9月16日 22時
