ノスタルジア (ページ13)

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fk「家、このへん？」

nb「あ、うん。そこの茶色のマンション」

徒歩3分だけあって俺の指さす方向には俺の住んでるマンションが見える

fk「えっ！？めっちゃ近所じゃん！！
あ、ちなみに俺はこれから職場の後輩んちで宅飲み」

そう言って買い込んだ酒やつまみの入った袋を俺に見せた

相変わらず付き合いの多い奴だ

気がつけば方向が同じということで途中までふっかと一緒に歩いた

と言っても3分後には俺のマンションのエントランス前に着いてしまってて、その間ほとんど会話無し

普通なフリして、実はふっかも気まずかったのかな

マンション前で立ち止まって『じゃあ』って声をかけようとしたらふっかが俺に声をかけた

fk「なぁ翔太。
お前、なんであの日来なかったの？」

突然核心をつかれて喉の奥がギュッと締められるような感覚がした

nb「あ…あれは…」

予測すらしてなくて何も浮かばなくて

ふっかから目線を逸らし、しどろもどろになっていると

fk「言いたくないなら無理に聞かない
もう、別に怒ってねぇし。寧ろみんな今どうしてっかなーって考えたりする事あったから、偶然でも翔太に会えて嬉しかった！」

懐かしい笑い方に、何故か無性に泣きたくなった

nb「俺も、ふっかに会えて嬉しかった」

そう言うと、ふっかは嬉しそうに笑った

そして斜めに肩がけしていたボディバッグのポケットをガサガサと物色し始めた

fk「これ、良かったら来てよ」

渡されたのは1枚の名刺

nb「スタジオ…deux?」

黒とシルバーを基調とした光沢感のある紙質の名刺

随分とスタイリッシュで格好良いデザインの名刺には深澤辰哉の名前もしっかり記載されている

fk「読み方は『ドゥ』な？
2号店の店長やってんの俺」

nb「てっ！てんちょ！？」

名刺をよく見れば名前の左上には店長の文字

この10年の間にふっかの出世具合いがエグくて声が少し裏返った

fk「店長つったって雇われだよ？
本店のオーナー兼店長が2号店出すからって俺がこっち任される事になっただけだし」

なんて謙遜するふっかだけど、美容師なんて職業、俺にはよく分かんねぇ世界だけど

店を任されるということは、相当信頼されてないと出来ないことだと思うから

やっぱすげぇなって思ってしまう