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dt「あー、うん‥‥まぁ。‥‥わかったよ。だからお前も頑張れ」
少し流された感じに聞こえたけど、舘さんからその言葉を聞けて、俺は満足して舘さんの店を後にした
閉店間際に来店して長々喋ってたからな、腕時計の針はあと数分で日付が変わろうとしていた
ab「タクるか」
終電はもう間に合わないだろう。ここから自分のアパートまではなかなかな距離
給料日前の少々痛い出費だなって思いながらも、気持ちは来る前よりもずっと軽くなっていた
ab「すいません、そこのコンビニの前で停めて下さい」
アパートまであと少しというところで、俺はタクシーを降りることにした
何となく夜風にあたりながら歩きたくなった
このコンビニからアパートまでは徒歩でも10分程度。やつれた身体にはちょうどいい散歩コースだ
料金を払って、タクシーを降りた
数歩、アパートのある方角へ歩き出してすぐ
sk「阿部ちゃん‥‥？」
会いたいとは言ったけど、こんなにも早く実現出来てしまうなんて聞いてない
てか、まだ佐久間と会える心の準備なんて当然できてなくて
不意打ちに耳に入る久しぶりに聞いた佐久間の俺を呼ぶ声に涙が出そうになった
今、後ろを振り返れば
会いたくて会いたくて堪らなかった人の顔が見れる
舘さんの店に訪ねてきた佐久間も俺と同じくらい酷い顔をしていたと聞いていたから
昔、俺のこと泣きながら心配してくれた、あの頃の佐久間の顔が頭を過ぎった
あんな顔、もう二度と佐久間にさせたくないって強く思ったはずなのに
佐久間にずっと笑顔でいてもらうように、無理はしない。心配させるような事は絶対しないって誓ったはずなのに‥‥
振り返った時の佐久間の表情を見るのが怖い
sk「今、仕事帰り？」
いつもハリのあるハキハキした声が、今日は随分と弱々しくて今にも消えてしまいそうだ
ab「ちょっと残業して、帰り際に飯食ってた」
声が震える。振り向きたいのに、身体が固まってしまったみたいに動かない
sk「そうなんだ。俺は夜バイトだったんだけど、勤務中に倒れちゃって早退してきた‥‥」
ab「えっ！？倒れたってっ‥‥」
佐久間の口から思わぬ言葉が聞こえて、驚きのあまり振り返ってしまった俺
そして、店の明かりに照らされた青白く覇気のない佐久間の顔に言葉を失った
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作者名：shiro | 作成日時：2022年11月6日 21時
