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ab「今度、オーディションあるんだって‥‥。佐久間から連絡きた」
dt「なんか返した？」
舘さんの質問に俺は小さく首を横に振った
ab「今の俺が何言えるって言うんだよ‥‥」
dt「何でもいいじゃん。佐久間は阿部からの言葉を待ってると思うけど」
ab「どんな言葉だよ‥‥」
今の俺が、何をどう伝えたらとか、もうわからないんだよ
あんな事して今更友達ヅラなんて出来ない
佐久間はオーディションがあるたび俺に報告してくれた。俺の「大丈夫！佐久間ならしっかりできるから」なんて言葉に効果なんてないけれど
それでも佐久間が喜んでくれたから、自分なりに誠心誠意、言霊だと思って佐久間に伝えてきた
そんなやり取りが出来なくなった今、無性に佐久間に会いたくなった
一欠片削れたオムライスを見つめて、次第に涙が溢れた
舘さんは何も言わない
ab「今、めちゃくちゃ佐久間に会いたいよ‥‥」
『大丈夫！』って言った後の弾けるような佐久間の笑顔を思い出した‥‥
dt「そんな顔してる。泣くほど好きなら会いに行けよ」
ab「簡単に言うなぁ‥‥」
dt「難しくしたら余計に行きづらいだろ」
まったくその通りなんだけど、その簡単が一番難しいんだよなぁ‥‥
ab「それ、そっくりそのまま舘さんにお返しするよ」
dt「なんで俺なんだよ」
自分で挽いたコーヒー豆をドリップしながら舘さんは、少し納得いかない顔でこちらを見た
ab「自分の胸に手を当てて聞いてみたら？」
少しいじわるな言い方をすれば、舘さんは素直に自分の胸に手を当て天を仰いだ
ab「マジでする人初めて見た」
dt「やっと笑ったな」
舘さんの小ボケにクスクス笑っていたら、ホッとしたような表情を浮かべてそう言った
ab「あぁ、言われて見ればそうかも‥‥」
時々突拍子もなく吹っかけてくる舘さんの小ボケも、時には役にたつこともあるんだなぁ
なんて、少し感心していたら
dt「俺も、ちゃんとするから、お前も会ってこいよ」
ab「ちゃんとって‥‥」
一瞬、舘さんの言ってる意味がわからず首を傾げたら
舘さんは眉をくいっと持ち上げ意味深な笑みを浮かべ、ハッとした
舘さんは多くは語らない。短く紡ぐ言葉の奥底を理解するのは難しいけど
俺だから分かるニュアンスで投げかけてくるからさ‥‥
だからやっぱりゆり組は正義なんだよ！
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作者名：shiro | 作成日時：2022年11月6日 21時
