ノスタルジア Another story (ページ15)

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自分の中での葛藤はしばらく続いて

結局舘さんに返信できたのは何時間も経ってから

しかも『お腹すいたかも』なんてまったく関係ない言葉を送った

まあ、舘さんなら俺のちっぽけな強がりを見抜いて

素知らぬ感じで『じゃあ食いにくれば？』て返してくるんだろうな

それから少しして、やっぱ予想通りの返信が返ってきた

住宅街の一角にある舘さんのお店は、人通りの無くなった街にひっそりと静かに佇んでいた

オレンジ色の玄関灯と、店まわりに敷かれた砂利に等間隔で置かれた小さなスポットライト

柔らかくて、どこか懐かしい雰囲気が漂っていて

何故だか泣きたくなった

dt「いらっしゃい‥‥」

迎え入れてくれた舘さんが、いつもと変わらなくて

すごくすごくほっとした

dt「とりあえず食べたら？」

舘さんがそう言って目の前に置いたのは、お子様ランチみたいに小さなオムライス

俺、見た目に分かるぐらい窶れちゃったんだな

俺が無理したり、精神的に参ってしまうと、直ぐに体に影響が出てしまうようで

佐久間はいつも寄り添ってくれて

舘さんはただ黙って消化にいいモノや、俺が好きな物を与えてくれた

『元気は口から入れるのが1番なんだ』って根拠も何もないのに勝手な自論を振りかざして色んなものくれたっけ

眼の前に置かれた小さなオムライス。美味しそうに見えるし、むしろ舘さんが作ったんだから美味しいに決まってるのに

どうしても食べたいという意欲が出てこない

それでも俺はスプーンの先に少し、オムライスを掬って口に運んだ

ab「おいしい‥‥」

本当は全然味がしなくて、それでも笑って見せたら
舘さんも嬉しそうに笑ってくれた

dt「それは良かった。翔太お気に入りのオムライスだから自信はあったけどね」

俺は口の中のものを飲み込んで、再び口を開いた

「何から、話したらいい？」

聞いてほしいことがありすぎて、でもどこから話したらいいのか分からない

dt「何でも。阿部が聞いて欲しい事をどうぞ」

やっぱり、予想してた通りの言葉が返ってきた

別に投げやりなわけじゃない。舘さんはわかっててそう言うんだ

多くは語らない。だけどいつも大きく両手を広げて待っててくれるような器を持っている

だから、時間はかかっても自分の言葉で彼に聞いて欲しいと思ってしまう

たぶん、佐久間もそうだったんだろうな‥‥