ノスタルジア Another story (ページ12)

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side:sk ページ12

dt「佐久間は悪くないよ‥‥。誰も悪くない‥‥」

少し震える俺の手をそっと包み、涼太が言った

涼太はとても悲しそうな表情を浮かべていた

それが、俺にも伝わって

また少し泣いた

sk「涼太、ごめんね、押しかけちゃって
あと店、開けるの遅くさせちゃって‥‥」

それからまた少し話した

阿部ちゃんと俺がこうなってしまった経緯と、俺の心情を‥‥

それから、

sk「今度、アニメ映画の声優オーディションあるんだよね‥‥
いつもオーディションや声の仕事貰うと1番に阿部ちゃんに報告してたんだけど、タイミング逃しちゃったな‥‥」

はじめて、公で声をやる仕事をもらった時、国際電話で涼太に報告した時の事を思い出した

俺が居ない所でも阿部ちゃんから俺の話が出るって教えてもらってからは1番に連絡をするようになった

それがいつの間にか俺の中での願掛けのようなものになっていた事に今気がついた

阿部ちゃんに報告して『佐久間なら大丈夫だよ！いつも通りで心配ないよ』そう言ってくれる事で、自然と気持ちがリラックスできたんだ

何気ない言葉でも、俺にとっては魔法の言葉

俺の力を最大限に引き出してくれる言葉だから

sk「俺、今までどうやって乗り切ってたのか分かんないや」

dt「阿部に報告してみたら？」

sk「返事なんて来るわけないよ。だって向こうは友達を辞めたがってる」

言ってて辛くなる。また鼻の奥がツンとして、下瞼に涙が溜まった

dt「でも、佐久間から切ったら本当に終わっちゃうよ？」

涼太の言葉が胸の奥に刺さる

カウンターの上で拳をつくった

きゅっと握りしめて、自問自答した

俺が諦めなかったら、まだ繋がってる？

一方的でもいい。ちゃんと阿部ちゃんと向かい合って話が出来るまでは

ずっと言葉を送り続けよう

sk「なんか、腑に落ちたわ。今まで返信無くても送ってたし、それに既読はしてくれてる！
俺のメッセージは、読んでくれてんだよ」

dt「佐久間の良いとこは、何事もポジティブ思考なとこだと思うよ」

涼太の穏やかに笑う表情に釣られて俺も笑っていた

まだ怖いけど、可能性が１％でも残っているのなら、俺はそれに賭けてみたい

sk「んじゃ俺帰るね‥‥。話聞いてくれてありがとう」

dt「またいつでもおいで。いつでも話聞くから」

sk「うん‥‥」

少しだけ、気持ちが楽になった