side:sk ページ11
(涼太、今大丈夫かな‥‥)
連絡もしないで、気のみ気のままに涼太のお店まで来てしまった俺
俺1人じゃ何も答えが出ないから、とにかく話を聞いて貰いたくて、ここまで来てしまったけど、この時間ってそろそろ夕方の営業時間も近いんじゃ‥‥
ふとそんな事が頭に過ぎって、店の扉を開けるのを躊躇っていたら
dt「佐久間！？」
涼太が出てきて、ただそれだけなのに何故だか安心してしまった
涼太は理由も聞かず店内へと入れてくれた。プチ同窓会以来の来店だ
あの日、あの後、俺と阿部ちゃんの関係がこんな形になるなんて‥‥
当時の俺は気にもしなかった。10年振りに集った仲間たちに会えた、少し特別な時間。
そうなって、次の日からは少しだけ毎日が、前より楽しくなるんだろうなって思ってたんだ
涼太が出してくれた新作デザート。1口くちに運んだ。
口の中に広がるミルクとバニラの香り。後から追ってくる柑橘系の酸味と爽やかな甘さが、朝から何も食べてなかった俺の身体に染みた
dt「落ち着いた？」
sk「うん、ごべん‥‥。涼太の店、俺‥‥」
dt「いいよ、緊急事態だから。こうゆう時、個人営業って良いよね？」
涼太が相変わらずの穏やかなトーンでちょっと冗談ぽく言った
本当なら、とっくに店開ける時間なのに‥‥
dt「で、何があったか話せる？」
涼太がそっとお冷のグラスを置いてくれた
ひとつひとつのさり気ない優しさが、嬉しくて、胸が苦しくなる
sk「阿部ちゃんと連絡とれない‥‥」
そう言えば、涼太が目を丸くして驚いてる
俺は初めて、涼太に『怖い』と漏らした
今まで当たり前だった日常が全然違うものに変わって、今まであったものが、俺にとってどれだけ大切で重要だったかを思い知らされた事で
俺は阿部ちゃんのいないこれからが想像出来なくて怖くて仕方なかった
dt「阿部に連絡してみる」
なかなか見ない涼太の少し取り乱した姿
涼太は自分のスマホを取りに厨房へと戻ろうとした
sk「たぶん俺なんだ。悪いの‥‥
俺が阿部ちゃんの気持ちにちっとも気づかなかったから
阿部ちゃんからしたら、友達やめたいって思っちゃうかもしんないけど
俺、やっぱ辛くて‥‥。どう答えてあげるべきだったのかなぁ‥‥」
涼太の腕を掴んで止めるんだけど、うまく手に力が入らない
相当参ってるんだな、俺‥‥
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作者名：shiro | 作成日時：2022年11月6日 21時
