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わたしは三日月様に合わせる顔なんてない。
あの美しい刀そっくりに造られ、挙句“宗近”と名乗っていた贋作のわたしが、本歌に会えるわけがない。
会えたとしても、即打ち首だ。
……また、癇癪を起した主様がわたしをボロボロにするんでしょうね。
そう覚悟して目を瞑ったとき。
淀んだ空気が一瞬にして浄化され、瞼越しに眩しい光が一室を満たす。
上質で品のある神気と、桜の香りに包まれた気がしました。
「三日月宗近。打ち除けが多い故、三日月と呼ばれる。よろしくたのむ」
あ、ああ……来てしまったのですね、三日月様！
瞑っていた両目を開けると、この世で一番美しい刀と目が合ってしまった。
「……お前は、暁か！」
わたしを見て血相を変える三日月様。
やはり、わたしを良く思っていないのでしょう。
「三日月様。アタシ、審神者の××って言います。三日月様をお迎えするためにぃ、この贋作を懲らしめていたんです。」
「……そうか、お前がか」
三日月様は表情をすっと消し、自身を鞘から抜き去った。
そのあまりにも流麗な動作は、今から殺されるとわかっていても目が離せないほどに美しい。
彼の手によって、わたしはもうじき折られてしまう。
主様はわたしのことをボロボロにするくらいですから、止めに入りはしないでしょう。
覚悟してもう一度強く目を瞑り、刀を振るうわずかな音に耳を澄ませた。
……しかし、いつまでたっても痛みは来ることなく、かわりに自分や、ましては他の刀剣たちの物でない血臭を嗅いだ。
ごとり、と重たいものが落ちる音は、何度か経験がある。
これは、首が落ちる音。
『……あ、主、様？なんで、どうして……？』
死んでほしいわけでも、生きていて欲しいわけでもなかった。
ただ、どうして主様が殺されてしまったのか、わたしにはわからなかった。
「暁よ」
刀身に着いた血を払い、すっと鞘に収める三日月様。
茫然としていると、三日月様は駆け寄ってきて、そのまま……
わたしを、抱きしめていた。
「あぁ、暁。愛おしき俺の写し……ようやく会えた」
『みか、づきさ、ま？わ、わたしは、写しでは』
「もう少し早く俺がここに来ていれば、お前は……」
優しく温かい抱擁と、想定外の柔らかい言葉にわたしは激しく動揺してしまう。
それはもう、主様が殺されてしまうのを忘れるほど。
「俺が来たからには、もうお前にはこのような怪我はさせぬ。きっとな」
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火狩 - このお話とっても面白かったです 更新頑張ってください (8月10日 20時) (
レス) @page5 id: 1ca09d8d18 (このIDを非表示/違反報告)
リン(プロフ) - 早く続きが見たいです！楽しみにしてます！頑張ってください。応援してます！ (2022年3月23日 17時) (レス) @page5 id: 4c69a0ba50 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：るき | 作成日時：2021年5月9日 4時
