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誰かの呼ぶ声がして、わたしはそこへ降り立つことを決意しました。
『暁宗近です。……わたしのような卑しい贋作を必要としてくれるなんて、変わったおひとですね。』
新しい主様は、とても容姿の整った女性でした。
艶美な厚い唇は深紅よりも一層赤く、光を一切通さない黒髪は深い闇夜を想起させる。
美しい、それはもう、恐ろしいくらいに。
「ふぅん、アナタが噂の三日月宗近の贋作ね。確かに、ちょっと似てるわ。」
舐めまわすような視線に、ほんの少し嫌悪感が混じる。
どうしてなのでしょう……自分の主様なのに、身体が受け付けないなんて。
「それで、アナタがいると三日月宗近は来ないって噂なんだけど」
『そ、それは……わたしがあのお方の贋作だから、でしょうか。きっとあの方は私を赦せるはずがありません……』
「ふふ、そうよねぇ。敵を倒せない出来損ないのくせに、見てくれはいっちょ前に天下五剣の生き写しだもの！」
『あ、あるじ、さま……？』
「なんか顕現が難しいからわざわざ資材無駄遣いして呼んだのに、大損した気分だわ！弱っちいし、全然美しくもない。はあ、三日月様をお迎えするためにわざわざ集めた資材、どー責任とってもらおうかしら」
急に不機嫌になってしまった主様。
まあわたしが贋作なのがいけないのはわかっているけれど……
「あ、そーだ！三日月様はアンタのことが嫌いだから出てこないのよねぇ」
『お、おそらく……』
「なら簡単じゃない！アンタをボロボロにいじめてやれば、三日月様はアタシの元へ来てくれる」
歪な微笑に、背筋が凍り付きました。
少なくともこのひとは、わたしが知っているひととはかけ離れた存在であると、すぐに脳が処理を始める。
とにかくこの方から離れないと……！
「は？誰が動いていいって言った？」
『っ！』
襖に手を伸ばした瞬間、黒い縄がわたしの体にするすると伸びていき、絡めとり、首と手首と足首に黒い縄がぎちぎちと締め上げるたびに、激しい痛みと脱力感が襲い掛かる。
身動きの取れないわたしを見て主様は惚けた表情をしていた。
「カワイイ泣き顔ねぇ。じゃあ今度は鳴き声を聞かせてちょうだい」
する、と腰から何かを抜かれる。
随分と見慣れた、わたしの本体を持つ主様が目の前に。
『まって、主様、だめ、やめてくださ……』
「えーいっ」
主様は嬉々としてわたしの刀身に罅を入れ、本丸にはわたしの無様な叫び声が響いた。
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火狩 - このお話とっても面白かったです 更新頑張ってください (8月10日 20時) (
レス) @page5 id: 1ca09d8d18 (このIDを非表示/違反報告)
リン(プロフ) - 早く続きが見たいです！楽しみにしてます！頑張ってください。応援してます！ (2022年3月23日 17時) (レス) @page5 id: 4c69a0ba50 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：るき | 作成日時：2021年5月9日 4時
