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あれから何日経っただろう
琥珀は帰ってこなくなった。
ただ何をするでもなく、ぼんやりと
過ぎて行く日々を見送る日々。
トントン ー
玄関をノックする音がして、視線だけをそちらに向ける。うちを訪ねてくるのは限られてる、そのうちの誰かだ。恐らくコブラかな。
「おい、A。腐ってないでいい加減出て来い」
「腐ってねえわ。何か用?」
久々に声をかけ発したからか、言い終わると少し噎せた。“開けろよ”と言うので仕方なく玄関の鍵を開けて押し開く。差し込んだ陽射しが眩しい。
昼間だったのか、と気付かされるほど昼も夜も無い生活を送っていたらしい。流石にマズイな。
「生きてたか」
「お陰様で」
「琥珀さん。居るか?」
「もう何日も帰ってないよ」
コブラが双眸を見開いた。そして視線を下にやって、再び私に視線を送って言った。
「琥珀さん、MUGEN解散するって言いに来たあと…“じゃあな”って言ったんだ」
「…….、」
“じゃあな”
確かに琥珀は私にもそう言った。考え過ぎだと思ったけど、“行ってくる”じゃなくて…“じゃあな”と。
「A、俺等も琥珀さん探すから」
「いい。私が探す、丁度いいや」
「あ?何がだよ」
目的がなきゃ、今の私は生きて行けそうにない。龍也、私は琥珀を探よ。心の整理は未だつきそうにないけど、出来たらきっと会いに行くから。待ってて。
「私、兄貴が見つかるまで探すから」
コブラの制止を振り切って身支度を始める。コブラは私が移動する度に後ろを付いて来てなんか言ってるけど聞こえない振りした。
「おい、A!探すアテもねえだろ、それにお前はバイクもねえんだぞ」
「足があれば十分、」
はあ、とコブラは盛大に溜息を吐いた。何を言っても無駄だと判ったのだろう。
「勝手にしろよ、連絡くらいは寄越せ」
「勝手にする、」
コブラは私を一瞥して踵を返すと玄関から出て行った。それを何となく見送ってから呟く。
「、ごめん…暫く此処に戻るつもりはない」
必要最低限の物だけ持って、山王を出るよ。ごめんね、コブラ。私は琥珀と龍也が居なくなって羽を捥がれた気がしてならない。こんなの私じゃない。
少し、自分を取り戻しに行ってくるね。
ごめんね。
バイバイ、皆。
バイバイ、山王。
また、いつか ー
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テトラ(プロフ) - れおなさん» 喜んで頂けて嬉しいです!これからも良かったら読んでやって下さいm(_ _)m (2016年12月11日 11時) (レス) id: 7f7b42d4ef (このIDを非表示/違反報告)
れおな - ホントにそうですよ!笑こんな、イケメン兄貴がいたら自慢になるし、いいことありすぎて!更新、ありがとうございます!! (2016年12月11日 8時) (レス) id: 3a84a667db (このIDを非表示/違反報告)
テトラ(プロフ) - れおなさん» うちのお兄ちゃんでもいいと言っていただけたら有難いですm(_ _)mコメントありがとうございます! (2016年12月8日 8時) (レス) id: 7f7b42d4ef (このIDを非表示/違反報告)
れおな - キャーーー!!雅貴ーー!!広斗もいいですけど、雅貴もいいですね! (2016年12月7日 18時) (レス) id: 3a84a667db (このIDを非表示/違反報告)
テトラ(プロフ) - れおなさん» れおなさん、お久しぶりです!期末テストお疲れ様ですm(_ _)mコメントは下さるだけで有り難いです!はい、共に買いましょう!デーブイデーを!笑 (2016年12月1日 19時) (レス) id: 7f7b42d4ef (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:tetoratora0216 | 作成日時:2016年11月25日 18時