【獄都事変】雨と花と【木舌】

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｢あの｣






｢はい？｣









少し聞き取りにくいのか耳を近づけるようにしておれの声を聞こうとする彼女









｢こっちの傘に入りませんか？｣






その方が声も聞きやすいですし、









その声がはっきりと聞こえたのか悩んでいる彼女






少ししてから







｢じゃあ、お邪魔します｣







と、自分の傘をたたみおれの傘に入ってきてくれた









顔が赤く見えたのは気のせいだろうか









一気に近くなる距離









｢これで話しやすくなりますね｣







そういって微笑むと









｢そうですね、ちゃんと聞こえます｣






とにっこり笑ってくれた









幽霊でも体温があるのだろうか


心なしか温かく感じる









また他愛もない話を続ける






おれが笑えば、彼女も楽しそうに笑ってくれる







緩やかに過ぎていくこの時間が愛おしいと感じるようになった









なによりも、彼女の隣にいられること









楽しげに笑う彼女を見ることができることが嬉しかった





彼女に悲しい顔をさせたくないと、思うようになっていた









所詮は幽霊と獄卒



結ばれることはないとしても








少しでも彼女の傍にいられたら、と








そんなことも考えるようになっていた









それほどまでにおれは彼女に惹かれていたのだ

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