キスフレ (ページ21)

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このニュアンスは、貸すじゃなくって俺ん家ってこと？
まだ真っ直ぐ前を見ている神ちゃんを見つめて、葛藤する。

「…いく」

『ん、部屋片付けとこお～』

葛藤には2秒で負けた
そりゃそうだわ、好きな人の家に行きたい以外の感情はないよな。
無事にマンション下まで届けてもらって、お互いの都合がつく日を約束してから車をおりた。
この前と同じように運転席側に回ってお見送りする。

「送ってくれてありがとね」

『んーん！』

「気をつけ…」

『俺、今日の服装めっちゃ好き。髪下ろしてんのも大好き』

バイバイしようと手をあげた私の髪に神ちゃんが触れる
突然のことに、あげた手はゆっくり下ろした
心臓がうるさい
車のドア1枚隔てた距離では音が聞こえてしまいそうで

『またおろしてきて～？』

「…ん」

『ふふ』

そのまま髪の毛を1束すくってキスを落とす。

「！？またそん…」

『Aちゃん』

突然のことに思わず声を上げると、名前を呼ばれて耳に手を添えられる
あ、くる。と思った時にはもう唇は触れていて

『ん、じゃあおやすみい』

神ちゃんは車を出して帰っていく。
私は車が出たあともしばらく放心状態でその場から動けなかった。

「…全部気づいてたんじゃん」

髪も服装も全部気づいてて黙ってたってことでしょ。ずるいなあ。
毎回別れ際の狼感にいつもやられてしまう。
触れた唇が熱いのはもちろんのこと
感覚なんてないはずの髪の毛まで、その日はお風呂に入っても、眠る直前になっても、1束だけ熱く火照ったように感じた。