道 (ページ1)

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タイトル１ページ1

うちの父は『男子厨房に入らず』決して関白なのではありません。
｢台所は女性の仕事場だからね、人の仕事場に無闇に踏み込んではいけないんだよ｣と父は言います。

｢それにしても洗い物を手伝うだとか食器を流しに出すだとか、それが優しさじゃないの？｣と私が言うと父は
｢洗い物にも人それぞれの作法があるだろう？違うやり方をされるっていうのはスッキリしないものだよ。それに、お母さんの大切に扱ってる食器を割ったら大変だ。食事を作る所から片付けまでが彼女の仕事だから､最後まで彼女のペースを乱すような事はしないんだ。｣と父は言います。

なんだか煙に巻かれたような気になる父の言葉。それでも妙に納得してしまうのは
｢母さん、いつもありがとう。｣
｢美味しかったよ、ごちそうさま。｣
｢ありがとう、助かるよ。｣
そんな父の言葉の数々のせい。

そんな態度が、父は決して感謝と礼節を忘れない男なのだと、私を妙に納得させている。

父の周りには爽やかな風が吹く、父は凛として立っている｡

父には強い芯があり、父はとても柔軟だ。

母はきっと今でも､そんな父に恋をしている。

そんな事を思った、ある春の日。