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その人は、胡蝶しのぶさんという方だった。


A「助けていただいて、本当にありがとうございます。」

胡蝶 「いえいえ。ところで、あなたのお名前を伺ってもよろしいですか?」


手当を済ませてもらって、宿へ送ってもらっている。


A「Aと言います。」

胡蝶 「苗字は。」

A「苗字で呼ばれるのは好きではないので、名前だけ。」

胡蝶 「そうですか。Aさん、ですね。何故あのようなところにいたのですか?」

A「夕食をとりたくて。しかし、ここへ来て間もないので、どこに何があるのか分からず。」

胡蝶 「そうだったのですね。ちなみに、どこへ住んでらっしゃるんですか?」


なぜだろう。この人と話していると落ち着く。私よりも背が低くて、細くて、まさにか弱い女の子って感じなのに。まるでお姉さんのように感じる。


A「此処から少し歩いたところの宿です。」

胡蝶 「宿ですか。住むところがないのですか?」

A「はい。探してる途中です。」


すると胡蝶さんは何かを考えているような顔になった。


胡蝶 「Aさん、明日はお暇ですか?」

A「え?学校がありますけど。その後は何も。」
 
胡蝶 「分かりました。明日、学校が終わったくらいに宿を訪ねます。私と一緒に来てほしい場所があります。もしかすると、お家がもらえるかもしれません。」


…はい?



A「お、お家を!?もらう!?」

胡蝶 「ええ。」


喜べA!こんな機会二度とないぞ!


A「よろしくお願いします!」

胡蝶 「はい。」


再び胡蝶さんの柔らかな笑顔が見えた。胡蝶さんには助けてもらってばかりだなぁ。





胡蝶 「失礼ですが、おいくつですか?」

A「十三です。胡蝶さんは。」
 
胡蝶 「十六です。」

A「年上なんですね。私よりもお若く見えました。」

胡蝶 「ふふふ。」


それから私は、胡蝶さんとたくさん話をした。鬼殺隊という組織のことも少しだけ知った。彼女がどこか悲しそうな、怒るような表情を見ると、鬼というものがどれだけ憎いのか、残酷なのかを思い知った。鬼殺隊の隊員たちも、家族を鬼に殺された人がほとんどだとか。


どれだけ私は恵まれてるのだろう。


A「あ、ここです。」

胡蝶 「そうでしたか。それではまた明日。」


私は胡蝶さんに頭を下げた。

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作者名:照山紅葉 | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2021年9月29日 23時

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