12 ページ13
やっぱりそうだよな。私って、人に迷惑かけることしかできないんだ。役には立てないんだ。
私より何倍も大変な仕事をしている人たちだっているのに。
こんなところで体調を崩すなんて。限度を考えないなんて。
馬鹿だ。
役に立てないじゃない。立たないといけない。役目を果たさないといけないのに。
自分が嫌になってくる。
私は本当にここにいていいのだろうか。
役立たずの私なんか…。
ああもう!訳がわからない。
A「!?」
私の手に何か温かいものが重なった。
時透 「焦らなくてもいいよ。」
時透君は微笑んで私に言った。温かいものは、時透君の白い手だった。
時透 「焦らなくても、君の居場所はなくならない。」
A「…え?」
初めて見た。時透君の笑顔。温かい。いつも無表情のくせに。こんな顔ができたんだ。
時透 「自分で自分を追い詰め過ぎだって言ってるの。Aはそういう子だから、ちょっとしたことで色々考えちゃうと思うけど。」
さっきの冷めたような声が嘘みたいに優しくなってる。
時透 「気にし過ぎたら、それでこそ君が壊れる。役に立ってるか立ってないかなんて、君が決めることじゃないでしょ。」
まるでさっきの心が読まれているかのよう。
時透 「だから、無理しないでよ。僕だって、お客さんだって、君が笑顔だと心が安らぐんだ。君の心からの笑顔が、皆大好きなんだ。これからも、その笑顔を僕達に見せてよ。
命をかけて戦う勇気を、希望を…皆に届けてよ。」
時透君や皆にとって、私はちゃんと役に立ててたんだ。
それを私は今、裏切ろうとしてた。最低だよ私。
時透 「…今言ったばかりでしょ。泣かないの。…笑って。」
A「…無理だよ。」
時透 「分からずや。…まぁ、僕の前だけでなら、泣いてもいいよ。」
そう言うと時透君は私を抱きしめた。
普通なら恥ずかしいけど、今はそれよりも嬉しい気持ちで溢れてる。
皆にとって、私は必要な存在になれていたんだ。
それだけで嬉しかった。
今だけなら、泣いてもいいよね?
時透 「てことで、今日はお店休んで。ご飯食べて寝て。」
A「ご飯はちょっと…私食欲な(時透「Aが食べ終わるまで僕、帰らないからね?」はい。」
このあと、時透君に強制的にご飯を食べさせられ、本当に食べ終わるまで帰ってくれなかった。
116人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ