[文豪ストレイドッグス]掴んだこの手を、もう離さない[芥川龍之介][太宰治]

＊ ページ16

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｢A…これ受けてみないかい？｣


夜、兄さんが見せてきたのは高卒認定試験の案内状だった


｢高卒認定…？私が…？｣

｢あぁ、AにはこれからAの人生を自由に生きて欲しい
その為には必要だと思うんだ、就職にも大学に行くにも高卒認定が｣


突拍子もないことだった、小中高と学校に行っていない私は常識的な知識があるのみで数学や理科、歴史など詳しくやった覚えは無い

本で読むだけだった


｢これから勉強すれば間に合うよ、Aならきっとね｣

｢でも…｣

｢物事を始める前に尻込みしないの、やってみなきゃわからないだろ？｣

｢…うん｣


兄さんに論破されて自信は無いけど頷いた

そして、私と兄さんは試験への勉強を始めた


ーー

｢数学、見ていただけるんですか？｣

｢あぁ、時間のある時だけだが
俺が見てやろう｣


兄さんがこの事を国木田さんに話したら、元数学教師の国木田さんが勉強を見てくれることになりました


｢ここの…因数分解と、平方根…あとは証明の問題が苦手です｣

｢そうか、まず因数分解はだな……｣


ーー


｢A、根詰め過ぎは良くないよ？
少し休んだらどうだい？ココア淹れたよ｣

｢ありがとう、ここがよく分からなくて…｣

｢…あぁ、理科か、Aは理数が苦手なのだね｣

｢うん、国語と社会、英語は分かるんだけど…どうしても理数が｣


兄さんはうーん、と考えると


｢明日、国木田君に聞いてみようか
ジュールの法則も数学のようなものだ
私じゃうまく、説明できる気がしない｣


兄さんは夜中まで勉強する私を心配して時折部屋に顔を見せる


｢そろそろ寝たらどうだい？お肌に悪いよ｣

｢まだ平気…ここの単元だけやっておきたいの｣


そうかい、と兄さんはいって部屋を出た
兄さんは私が勉強を始めてから私よりもさきに寝た事が無い
心配してくれるのは嬉しいけど兄さんの方が心配だ


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