遭遇 2 ページ39
本当に千さんにも兄ちゃんにも感謝でいっぱいだ。
空の買い物袋に図書館の本を入れて、住宅街を抜け大通りに出る。
あいにく図書館は臨時休館日だったらしく、返却ポストに本の返却しか出来なかった。
また明日借りに来よう。
『よし!次はトマトとトリ肉!』
ここからスーパーマーケットまでは少し距離がある。
売り切れないうちに早足で向かった。
―――――
『…〜〜♪』
堪えきれない嬉しさが鼻歌になって溢れる。
…やった、今日は運がいいな。
スーパーでトマトとトリ肉(そもそもオマケなんて制度、このスーパーには無かった。)を買って外に出ると、待ち構えるようにして知らないおばさんが立っていた。
ずい、と怖い顔で近付いて来られたので何か文句でも言われるのかと身構えたが、その口から出た言葉は全然想像してなかったものだった。
「ちょっとアンタ!そんなひょろっちぃ体して、買ったのそれだけなの!?
無理なダイエットはやめなさい!!女の子は少し丸いほうがいいのよ!
ほら!これあげるから、帰ってちゃんと食べなさい!!」
そう捲し立てられて、お米やら豆腐やら果物やらを袋に詰めれるだけ詰められる。
そうしておばさんは満足げに鼻を鳴らしてさっさと帰って行った。
怒涛の出来事にしばらく放心した後、袋の重さをズシッと腕に感じ、慌てて遠くに見える背中に向かってお礼を叫んだ。
世の中にはこんなに親切な人もいるんだ。
今度会ったらちゃんとお礼を言おう。
袋がはち切れそうなくらい詰め込まれた食材を見て、自然と笑みがこぼれる。
千さん驚くだろうなぁ〜。
…あ、牛肉も豚肉も入ってる!兄ちゃん喜ぶだろうなぁ〜。
ふふっ、ご飯の時に何があったか話そう。
そんなことを考えているうちに、兄ちゃんがバイトしている居酒屋の近くに来た。
日もかなり落ちてきて道を歩く人の顔に影を落とす。
兄ちゃん、まだ終わらないかな?
もっと暗くなる前に帰らないと千さんが心配してしまう。
それに、ここで待つにも買い物袋が重くて手が痺れてきた。
…うぅ、筋トレしておけばよかった…。
諦めて来た道を戻ろうとした時、ガラッと少し先のお店のドアが開いた。
中から黒いキャップを被ったよく見知った人が出てくる。
『…あ、兄ちゃん!』
「…え!A!?迎えに来たの!?…どうしたのその袋!」
駆け寄ってきた兄ちゃんが袋を掴んで私の手から重みが消える。
「わ、重っ!…あーぁ、手ぇ、赤くなっちゃってる…。」
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欅夏希 - とっても面白いです!感情の変化や状況などが分かりやすく、読みやすいなぁと個人的には思っています!お話を作るのは簡単ではないかもしれませんが、続きを読めるのを楽しみに待たせて頂きます。無理なさらず、頑張って下さい。 (2020年3月27日 22時) (レス) id: 94cd216a66 (このIDを非表示/違反報告)
柚木夏紗 - 面白いっ!!!!更新待ってます!!! (2020年3月18日 7時) (レス) id: 73f9f96d98 (このIDを非表示/違反報告)
聖(プロフ) - はじめまして いつも更新を楽しみにしています。 これからも頑張ってください^_^ (2020年3月14日 12時) (レス) id: d507af1541 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:テル | 作成日時:2020年3月3日 13時