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寝顔 【百side】 ページ37

プレゼントしてから毎日つけているそのピアスは前より少しくすんできている。

安めのやつだったからな…。
お金貯めて、ちゃんとしたいいやつ買ってやらないと。

それでもAはちゃんと手入れしているのだろう。

カーテン隙間から差し込む朝日を反射して光るピアスを、指でそっとなぞる。

この下には、未だ痛々しい傷跡が残されている。
跡は小さくなったけど、多分一生消えはしない。

「……ごめんな。」

もっと早くに気付いていれば、もっと早くに動いていれば、何か変わったんだろうか。

こんな小さな体に、一体どれほどのことを抱えているのだろう。

柔らかい頬を撫でるとくすぐったそうにAが身動ぎした。

『……ん…?』

うっすらと開かれた目はぼんやりと宙を見つめる。
しばらく視線を漂わせた後、オレを見つけたようで安心したように微笑んだ。

『…にぃちゃん……?おはよ?』

寝ぼけているのか言葉はたどたどしく、今にも瞼がくっ付きそうだ。

「ふふっ、おはようA。もう少し寝てていいよ、オレももうちょっとここに居るから。」

寝起きのAは本当にかわいい。
しばらく頭を撫でているとまた小さな寝息が聞こえてきた。

ほんの1、2年前、テレビの中で見た顔が目の前にいる。

でも、前とは全然違う。
作られた存在なんかじゃない。

AはAだ。

誰かの所有物なんかじゃない。

…これから、どうなるのか分からない。

Aが音楽をするとして、オレはどこまで守れる?

5年の間で、2人にどこまで役に立てる?

…いや、5年間だけじゃ駄目だ。

その先のことも考えないと。
オレがいなくても、大丈夫なようにしないと。

……でも、本当は――――――

浮かびかけた感情を胸の中で掴んで握り潰す。

違う、オレはそんなの望んでない。
オレが抱いていい願いじゃない。

オレの中の願いはいつだって決まっている。

ユキの為に、Aの為に。





そっと、Aを起こさないように小さな体に顔を埋めた。





―――――
【Aside】

『千さん、ちょっと図書館に本返してくるね〜』

「うん、気を付けて。」

もう日が沈み始めている。
借りてた本を読み終えたから図書館が閉まる前にと、急いで支度をする。

今日は千さんも兄ちゃんも仕事が休みでレッスンも無いから、千さんはさっきまでずっと作曲をしていた。

今は夕ご飯の準備中。

コトコトと野菜を煮込んでいる鍋からいい匂いが漂ってくる。
…今日はシチューかな?

遭遇→←約束



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作品ジャンル:アニメ
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欅夏希 - とっても面白いです!感情の変化や状況などが分かりやすく、読みやすいなぁと個人的には思っています!お話を作るのは簡単ではないかもしれませんが、続きを読めるのを楽しみに待たせて頂きます。無理なさらず、頑張って下さい。 (2020年3月27日 22時) (レス) id: 94cd216a66 (このIDを非表示/違反報告)
柚木夏紗 - 面白いっ!!!!更新待ってます!!! (2020年3月18日 7時) (レス) id: 73f9f96d98 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - はじめまして いつも更新を楽しみにしています。 これからも頑張ってください^_^ (2020年3月14日 12時) (レス) id: d507af1541 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:テル | 作成日時:2020年3月3日 13時

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