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願い 【百side】 ページ24

はっと気が付いたAは戸惑っていた。

覚えてないんだ。

この黒いシミの人がいたのか聞くと、そうだと頷いた。

腕を掴んで正解だったと思った。

優しくて影響されやすいAのことだ。
きっと、助けようとでもしたんだろう。

あのまま手を伸ばしていたら、どうなったかは分からない。

表情の消えたAの虚ろな顔に、底知れない恐怖を感じた。

A自身が怖いのではない。
Aがどこかへ消えてしまいそうで怖かった。

【…どこへも、行かないで。】

バンさんのように…。

いや、きっとバンさんならある日突然ひょっこり顔を出すかもしれない。
行方は全く分からないままだけど、どこかで生きていると信じれることが出来る。

バンさんだから、そう思える。

でも、多分Aはそうじゃない。

手を離したら本当に消えてしまいそうな気がした。

Aがいなくなれば、きっとオレは狂ってしまう。

きっと、オレはオレじゃいられなくなる。

一緒に暮らし始めて半年近く経っても細いAの小さな体を抱きしめると、小さな腕が抱きしめ返してくれた。

オレが守るんだ。
この世界の怖いことから全部。

立ち上がって背後の黒いシミを一瞬睨んだ。

この人に対して、悪い感情は無い。
このシミはこの人が選んだ結果だ。
否定も肯定もしない。
生きていないんじゃ、この人の苦しみも痛みもオレが分かってあげることなんて出来ないから。

だけど、もしAに何かしようっていうんなら、オレは絶対に許さない。
Aに手を出そうってんなら、悪魔でも怪物でもオレが全部相手してやる。

黒く濁りかけた気持ちを切り替えるようにカーテンを勢いよく開け、差し込む光に目を細めた。

眩しいな…。

背後で笑い声が聞こえて振り返ると、珍しく爆笑(…初めて見たかもしれない。)しているAと布団の使用方法が逆になってるユキがそこにいる。

Aと同じように噴き出しながら布団を少しめくれば、神様みたいに綺麗な顔のまま熟睡しているユキ。

Aは涙を浮かべながら笑っている。

朝日よりもずっと眩しくて温かい人たちがそこにいる。

あぁ、どうかこの幸せが永遠に続きますように。

そのためなら、オレはなんだって出来るし、何にだってなれる。





―――――
【千side】

「はぁ〜…楽しかったね、ユキ!」

「そうね、結構面白かったよ。」

撮影の帰り。

おかりんの車に乗って事務所に帰る途中もモモは楽しそうに今日のこと明日のことを話す。

これからのこと 【千side】→←不可抗 2



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作品ジャンル:アニメ
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欅夏希 - とっても面白いです!感情の変化や状況などが分かりやすく、読みやすいなぁと個人的には思っています!お話を作るのは簡単ではないかもしれませんが、続きを読めるのを楽しみに待たせて頂きます。無理なさらず、頑張って下さい。 (2020年3月27日 22時) (レス) id: 94cd216a66 (このIDを非表示/違反報告)
柚木夏紗 - 面白いっ!!!!更新待ってます!!! (2020年3月18日 7時) (レス) id: 73f9f96d98 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - はじめまして いつも更新を楽しみにしています。 これからも頑張ってください^_^ (2020年3月14日 12時) (レス) id: d507af1541 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:テル | 作成日時:2020年3月3日 13時

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