不可抗 ２ ページ23
…あれ、何をしてたんだっけ？
何で腕なんか伸ばしてるの？
確か、目が覚めて、あの人が見えて……それでどうしたっけ？
……記憶が飛んでいる。
訳が分からなくて困惑していると、兄ちゃんがしゃがみ込んで私の両手を包み込むように握った。
「…このシミの人が見えたの？」
『…うん。』
兄ちゃんは少し悲しそうな顔をして眉を下げた。
「…そっか。でも、もう関わっちゃダメだよ。幽霊が皆いいヤツってわけじゃないんだから。…分かった？」
諭すような言い方に素直にうなずいた。
すると兄ちゃんは笑ってぎゅっと抱きしめてくれた。
抱きしめる力も、いつもより強い。
離れた時にはいつもの兄ちゃんに戻っていた。
「さ、ちょっと早いけど支度しよっか！…ユキはまだ起きないと思うから…朝のお散歩でも行く？」
気が付けば部屋は明るくなっている。
兄ちゃんがカーテンを開けると、眩しい朝陽が差し込んできた。
もう日が昇っていたのか。
私が目を覚ました時から随分と時間が経ってたみたい。
朝陽を直接浴びて顔をしかめた千さんは頭まで布団をかぶる。
すると逆に足が布団から出てしまってなんともオカシイ格好になる。
そして寝ている姿勢がとても良い。寝たまま直立不動だ！
『…ぶふっ』
可笑しくて堪えきれず噴き出すと、振り返った兄ちゃんが千さんの格好に気付いて同じように噴き出した。
私はツボに入ってしまったようで、なかなか笑いが治まらない。
笑い過ぎてむせ始めた私を慌てて抱えて洗面所に連れて行く兄ちゃん。
鏡を見て真っ赤な顔で涙目になっている私と寝癖で髪の毛が暴走している兄ちゃんがそこにいて、顔を見合わせてクスクスと笑う。
またいつもの日々が始まった。
【百side】
「…ん……？」
寝返りを打った時に隣にAがいないことに気付く。
薄っすら目を開けるとボヤ〜っとAがキッチンに立っているのが見えた。
「ん〜…A〜？何してんの？まだよる……」
ふぁ〜とあくびをしながら呼びかけるけどAは返事をしない。
不思議に思って立ち上がり、そっとAに近付いてみる。
そこで何か変だと思った。
Aはあの黒いシミの前に立っている。
ふら〜と手を伸ばすA。
嫌な予感がしてさらに近付く。
「…A？」
Aは返事をしない。
虚ろな目のままAは一歩、足を踏み出す。
「A、」
咄嗟にAの腕を掴んだ。
オレの勘が何か危険を察知している。
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欅夏希 - とっても面白いです！感情の変化や状況などが分かりやすく、読みやすいなぁと個人的には思っています！お話を作るのは簡単ではないかもしれませんが、続きを読めるのを楽しみに待たせて頂きます。無理なさらず、頑張って下さい。 (2020年3月27日 22時) (
レス) id: 94cd216a66 (このIDを非表示/違反報告)
柚木夏紗 - 面白いっ!!!!更新待ってます！！！ (2020年3月18日 7時) (レス) id: 73f9f96d98 (このIDを非表示/違反報告)
聖(プロフ) - はじめまして いつも更新を楽しみにしています。 これからも頑張ってください^_^ (2020年3月14日 12時) (レス) id: d507af1541 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：テル | 作成日時：2020年3月3日 13時
