【アイナナ】雨上がり、手を伸ばせば。 (ページ27)

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淡い期待と不安ページ27

悪夢を見た。

たくさんの痛みが全身を襲う。

目を覚まして飛び起きてもその痛みは残っていた。
ぐっしょりと汗をかいていた。

意識を失う前の記憶が鮮明に思い出される。
時間が止まったような浮遊感に……、衝撃。
冷や汗が噴き出して、シーツを強く握った。

「ガシャーン！！」

突然部屋に響いた耳に突き刺さる音にパッと顔を上げると、矢島さんがプルプル震えながらドアの前に立っていた。
足元には割れた医療用品が散乱している。
それも気にならないようで、ベッドに駆け寄った矢島さんは私の手を握って泣きじゃくってた。

誰かにこんな風に泣かれたのは初めてで、どうすればいいのか分からなかった。

矢島さんはひとしきり泣いた後、「ちょっと怒られてくるから待ってて。」と言ってドアの方をくるりと振り向いた。
私もそちらを見ると、割れた医療用品が散乱したドアの前に、怖そうな看護師さんが腕を組んで立っていた。

数分後、シュンとした表情の矢島さんが戻ってきた。
だけど、私のベッドサイドに置かれた椅子に座ると、また笑顔に戻る。

それから矢島さんは嬉しそうに、私に従兄のお兄さんがいたことを話し始めた。
数日前に、まだ意識が戻らない私に会いに来たらしい。
そして明日、その人がまた会いに来るという。

「優しい人だから、殴ったりするような人じゃないから、大丈夫。…きっと、これからはその人があなたを守ってくれる。」

そう言う矢島さんは真剣で、優しい顔で、嬉しそうで、少し辛そうだった。

従兄…お兄さん…。

興味が無いと言えば、嘘になる。

殴られないのは、いいな。