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嫌な予感 【百side】 ページ19

「もう一度歌ってください!お願いします!!」

1ヶ月。

毎日、毎日ユキさんにそう頼み続けた。
追い返されても通い続けた。

「…わかった…………いいよ。」

頼み続けた末、ユキさんはもう一度歌うと約束してくれた。

ユキさんがまた歌ってくれる。

それが死ぬほど嬉しくて、泣いてしまった。

ユキさんとオレで、新しいRe:valeが誕生した。

ユキさんを説得して岡崎事務所と契約をした。

ユキさんと二人で暮らすことになった。
事故物件ということだったので少し物怖じしていたが、前の住人は首を吊って亡くなったと聞いて、キッチンの隅にあった黒いシミを見て、なぜか恐怖は消えていた。

ここで首を吊った人は、ここで一人で亡くなったんだ。
床にシミが出来るまで、誰にも見つけてもらえずに。

黒いシミの前に座って挨拶をした。

ユキさんとオレとたまに起きる怪奇現象と暮らす日々が始まった。
歌とダンスのレッスン、Re:valeの仕事、バイトに追われる毎日だった。
ユキさんはバイトを始めればクビになり、五線譜を前にしては曲作りに行き詰っているようだった。

そんな時だった。

バイト帰りに通る道沿いの電気屋。
丁度交差点の角にあって、壁に大きめのモニターがくっ付いており、いつも何かしらの番組が流れている。

信号待ちをしているときに、モニターからニュースが聞こえてきた。

「…次のニュースです。今日、午後5時頃、○○病院で屋上から患者が落下するという事故がありました。患者は○○病院に入院中の女性で、現在意識不明の重体です。警察は屋上の落下防止フェンスの老朽化が原因とし……」

○○病院、という単語を聞いて思わずモニターの方を見た。

画面のテキストには
〔屋上から落下 老朽化が原因か〕
〔10代女性 意識不明の重体〕
と表示されている。

10代女性。

いつだかの記憶が頭の中で再生される。

「…柊雨って子役知ってるか?」
「…○○病院に入院してるって噂が……。」

…ただの噂だ。
もう数カ月も前の噂だし、信憑性も薄い。

……でも。

でももし、本当だったら?
もし、本当に柊雨は○○病院に入院していて、もし、この屋上から落ちた子が柊雨だったら?

〔10代女性〕という単語がオレの中でその考えを大きくする。

信号が青に変わる。
ニュースも次の内容に変わる。

考えながら歩き出す。

……明日。

明日、バイトを少しだけ早く上がって病院に行ってみよう。
念のため、確認しに行くだけ。

違えばそれでいい。

それで…。

嫌な予感 2 【百side】→←柊雨 2 【百side】



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どこかの旅人 - ここまで惹き込まれたのは初めてです。更新楽しみにしてますね (2020年2月29日 2時) (レス) id: 9544a2fe14 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:テル | 作成日時:2020年2月2日 17時

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