【アイナナ】雨上がり、手を伸ばせば。 (ページ15)

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変化ページ15

海外でレッスンを始めて、１カ月が経とうとしていた。

九条さんがレッスンを見に来た。
私の様子を見て九条さんは首を振ると、電話をし始める。
電話し終わると、穏やかな表情で私に言った。

「雨、飛行機の時間だ。レッスンは終わり。天、外で友達が呼んでいるようだよ？行ってきなさい。」

「友達？はい、分かりました。」

チラッと私を見て、天は部屋を出ていく。
九条さんと２人だけになった。

『飛行機、ですか？』

九条さんの言っていたことがよく分からなくて聞き返した。

「あぁ、そうだよ。帰国の時間だ。君はもう要らないからね。」

淡々と、穏やかに九条さんは言う。

「さっき黒瀬と君のことを話していたよ。テレビで見た時は良いと思ったんだけど、実際見てみればとんだ偽物だった。壊れかけのものは早く捨ててしまって新しいものを買うのが一番効率がいいよと伝えておいたよ。」

背を向けて、歩き出しながら言う。

「…君の生い立ちを聞いたよ。生まれた時から失敗作だなんて、君も可哀そうだね。同情するよ。」

そう言って九条さんは部屋を出て行った。

しばらくどうすればいいのか分からず立ち尽くしていると、携帯が鳴った。
…三好さんからだった。

怒った声で、今すぐ帰ってこいと言われた。
すぐに荷物をまとめて部屋を出る
外に出ても、天の姿は見当たらなかった。

飛行機に乗って日本に戻る。
空港に三好さんが待っていて、すぐに車に乗せられて事務所に連れて行かれた。

「九条さんに言われたよ。柊雨は失敗作だってね。」

事務所に着いてすぐ、黒瀬社長がそう言った。

「よく、俺に恥をかかせてくれたな。」

気が付けば思い切り殴られて床に倒れていた。

「俺に迷惑をかけたらどうなるか、分かってないのか？」

今度は顔を蹴られる。

左目に衝撃と痛み。

意識はそこで途切れた。