【アイナナ】短編集 (ページ10)

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三月　【料理】ページ10

『いただきます！』

「おう、たんと召し上がれ！」

オレの作った料理をパクっと口に入れると、Aは満面の笑みを浮かべる。

『美味しい！』

すぐに次の料理に箸を伸ばす姿を見て、笑いながら言う。

「いっぱいあるからゆっくり食えって！喉詰まらせても知らねぇぞ？」

『だって、早く食べないと冷めちゃうでしょ？』

「んな瞬時に冷めねぇよ！全部アツアツのホカホカで出してるわ！」

軽く(？)突っ込むと流石プロだね、とAが笑って言う。

『三月って良いお嫁さんになるね。』

「は！？お嫁さん！？」

Aの言葉に思わず食べようとしていた肉を箸から落とす。

…落ちた先がご飯の茶碗で良かった。

「なんでオレがお嫁さんなんだよ。」

『だって、料理上手いし、お菓子作り上手いし、掃除も出来るし、洗濯も良い匂いだし……』

まだ続きそうなAの言葉を遮って言う。

「馬鹿かおまえ。男だからお婿さんだろ？それに、Aの方だろ？お嫁さんになるの。…オレの。」

『あぁ～そっか。じゃあ家事完璧のお婿さん！お嫁さんは私だね、女だし……誰の？』

途中まで笑ってたのに急に真顔になる。

「だから、オレの。」

『三月の？お嫁さん？……私？』

ポカンと放心しているA。

そんなマヌケた顔も可愛い。

…言うの、まだ先にしようと思ってたけど、今言おう。

「…なってくれる？オレのお嫁さんに。」

微笑みながらそう言う。

すると、ポロッとAの目から涙が零れた。

あれっ、嫌だった！？ヤベェ、どうしよ！

焦って立ち上がって謝る。

「わ、悪い！ごめんな！突然、嫌だったよな。」

『ち、違うの！…嬉しくて。』

「…へ？」

嬉しい？じゃあ、嫌じゃなかったってことか？

『三月からそんなこと言ってくれると思ってなかった。…私、家事ヘタクソだし、迷惑だって…』

「迷惑じゃない！迷惑なわけないだろ！…Aのこと、迷惑とか思ったことない。」

座ってるAの横に行って目線を合わせる。

「もう一回言う。…オレの、お嫁さんに、なってもらえますか？」

『…私で、いいの？』

「Aがいい。Aじゃないと嫌だ。……返事は？」

Aはもう一度泣きそうな顔になってから、さっきよりも満面の笑顔になる。

『……はい、喜んで。』

「…っ」

抱きしめるとAもそっと抱きしめてくれた。

泣きそうになる。

『…ふふ、泣いてる？』

「っ泣いてねぇ！」

真っ赤な顔を隠すようにAにキスをした。