【アイナナ】短編集 (ページ17)

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トウマ　【嫉妬】ページ17

『トウマ、お待たせ！』

「おう！A。俺も今着いたとこだから…」

『ふふっ嘘だぁ！鼻赤くなってるよ、ごめんね待たせちゃって。』

ヤベ、カッコ悪ぃ…。
張り切り過ぎて１時間も前に着いたとか言えねぇし。
でもAに悲しい顔させたいわけでもねぇし…。

「あ、いや、俺が好きで外で待ってたわけだし、別にお前のせいとかじゃ…」

『やっぱり早く着いてたんだ！ちなみに鼻は赤くなってないよ？』

「はっ！？おま、騙して！」

『あはは！騙される方がわるい～！ほら行こ！！』

ぐいーと腕を引っ張られて、危なくこけそうになりつつも歩き出す。
小さく息を吐きつつも、楽しそうに笑いながら振り返ったAの顔を見て自分の頬も緩むのが分かる。

「こらA、危ねぇから普通に歩けって！」

万が一にでもAが転んで怪我をすることは避けたい。
俺以外が付けた傷跡があるとか考えらんねぇし…って！！今ナニ考えてた俺！？
ブンブンと頭を振って邪念…いや違う！断じて邪念とか考えてたわけじゃなく…ただ純粋にAのことを想って、

『…どうしたの？顔赤いよ？体調悪い？』

ハッとしてAを見ると俺の腕を掴んだまま顔を覗き込んでいた。
至近距離で見るAの顔に、昨夜のAの顔が頭に浮か…びかけて無理やり掻き消す。

「いっ、イヤ！！なん、何でもねぇ！！早く行こうぜ！映画始まっちまうだろ！？」

そうだ、今日はAが見たいと言っていた映画を見に来たんだった。
いわゆるデートだ、純粋なやつな！

『…ホントに平気？気分悪かったら映画とか大きな音出るし、今日は止めとく？』

「いや本当にへーき！せっかくチケットあんのに見ないで帰るのはもったいないだろ？ほら、行くぞ！」

今度は俺がAを引っ張って歩き出す。
俺の様子に不思議そうにしていたAも、映画館が近付くにつれて頬が緩んでいく。

良かった、楽しそうで。
…っと、ちゃんと俺も楽しまなきゃな。後でAに叱られちまう。

映画見たらAが行きたいって言ってたトコに昼飯食いに行って、そのあと水族館に行って、んでマンションにAを送って…。
多分デートとしては王道のプランだけど、なんつーか…幸せだな。

後はあいつらに会わないことを祈るだけ。
Aと話し始めると止まんねぇし、今日くらい２人だけの時間を過ごしたい。
あいつらと楽しそうに話してるA見るとモヤモヤする…うん、こりゃ嫉妬だな。確実に。

まぁ、嫉妬くらいしてもいいだろ？