【アイナナ】短編集 (ページ16)

今日:15 hit、昨日:6 hit、合計:41,841 hit

悠　【食べ放題】ページ16

『当たった！！』

「え、何がっ！？」

突然立ち上がったAに驚いて声が上擦った。

『当たったの！』

鼻がくっ付きそうなくらい近寄ってくるもんだから訳の分からないまま返事を返す。

「よ、良かった、な…？」

『うん！』

「…で、何が？何かのライブチケット？」

『ううん、コレ！』

出されたスマホの画面を見ると、美味しそうなスイーツがズラリ。

『大人気で予約が取れないスイーツ店！それのスイーツ食べ放題チケットが当たったの！！』

飛び跳ねそうなくらい(若干跳ねてる)嬉しそうなA。

「へぇー、友達と行くの？」

『ううん、ハルとだよ？食べてみたいって前に言ってたでしょ？』

「え、…あ、そっ……か。」

当然のように『ハルもこの日空けててね？』と言うA。

……ヤバ、嬉しい、かも。

幸いその日は何も仕事が無くて、ちょっと浮ついた気持ちのままAと店に行った。

『美味しい！可愛い！ね、ハル！』

「…美味い。」

スイーツはどれも甘くて、美味しい。
何よりテーブルの向かいで幸せそうに笑うAが可愛くて。

「…それ、一口ちょーだい。」

『え？でも食べ放題なんだし、もう一つ取ってくればいいじゃん？』

「そーだけど、いいじゃん。」

あ、と口を開けるとしょーがないなー、とスプーンを差し出される。
パクと口を閉じると口の中に苺の甘酸っぱい味が広がった。

『…美味しい？』

「…うん、美味い。」

間接キス、した。
キスくらい、何回もしたことあるけど頬が熱くなる。
Aは…気付いてないよな、そのまま食べてるし。

…って、オレめっちゃ子どもっぽいじゃん！

悶々としながらスイーツを堪能した帰り道。
あれが美味しかった、これが綺麗で可愛かったと隣で話すA。
…オレと来てんのに、全然オレのこと考えてくれてないじゃん。

「…ねぇ、」

ぐい、と手を引っ張ってその勢いのままキスをした。
甘い唇。きっとオレのも甘いんだろうな。

「…別にオレとじゃなくても良かったんじゃん。」

ビックリしたAの顔。だけどすぐに笑顔に変わる。

『私がハルと行きたかったから行ったの！…何にヤキモチ妬いたの？スイーツ？』

「はぁ！？何で食いもんにヤキモチ妬かないといけないんだよ、ちげーし！」

『だって妬いてんじゃん。』

唇に柔らかいものが触れた。
Aからのキス。

『ふふっ、真っ赤。かーわい！』

そう言ってオレの手を引っ張る。
…反則じゃん、そんなの。