【アイナナ】短編集 (ページ11)

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大和　【バレンタイン】ページ11

『ハッピーバレンタイン！』

家に帰ってAに最初に言われた言葉。

「…ハッピーバースデーじゃないのね。」

ちょっと残念。

『あはは、うん。バレンタインをはじめに終わらせたの。』

「はじめ？」

俺の手を引いてAがリビングに入る。

リビングは綺麗に飾られていて、テーブルの上には料理とケーキが並んでいる。

『ハッピーバースデー大和さん。おめでとう！』

笑ってAが言う。

嬉しさと驚きでちょっと放心。

「…あ、ありが、とう。スゲー嬉しい。」

思わず顔が緩む。

嬉しそうにAがまた笑って、食べよう？と腕を引っ張った。

料理は全部手作りで、どれも美味かった。

たわいもない話をしながら飯を食う。

幸せだな、と、心からそう思った。

食べ終わって、２人で片づけて、風呂も入って。…別々にだけど。

今まではメンバーが祝ってくれたからそれはそれで賑やかで楽しかったけど、Aだけに祝ってもらうのも良いもんだな。

風呂上がりに今日は飲んでいいよと言われたので、ビールを飲む。

…美味い。

これでAも飲めたら良いんだけどな、こいつ、ビール苦手だし。

程よく酔ってきていい気分になる。

「…なぁ、A。プレゼントとか、あったりする？」

誰かの誕生日には必ずプレゼントをあげていたAだから、俺にもあるんだろうかと期待する。

まぁ、料理も一緒にいることも俺にとっては十分プレゼントなんだけど。

『あ、うん。……あるよ？』

歯切れが悪い返答。

「もしかして、Aがプレゼントです！とか？」

軽くふざけてそう言いながらAを見ると、顔を真っ赤にしているA。

「…………………………え、マジ？」

…………………………こくん。

俺と同じくらいの間の後、真っ赤のまま頷くA。

……ビール、飲まなきゃ良かった。

酔ってない状態でヤった方が良……いやいや何考えてんだ俺は。

とりあえず手に持っているビールは机に置いて。

「A、こっち来て。」

呼ぶと、素直に来てくれる。

「ここ、座って。」

膝の上に座らせてそのまま抱きしめた。

A、体に力が入ってる。

「……………いいのか？」

『………うん。大和さんだから。』

「……そう。…………こっち、向いて。」

頬に手を添えてキスをする。

A、スゲェ緊張してる。

けど、たぶんおんなじくらい、俺も緊張してる。

今日は、カッコ悪くても許してくれよな。