*初めまして ページ2
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カタン。
微かな物音が耳に届き、俺の意識はぼんやりと目を覚ます。
…俺は何をしているんだ。
曖昧な意識の中、そう思い出そうとしたところで目の前が真っ赤に染まる。
思い出すのは数時間前のこと。組織の任務の途中、銃で腹を撃たれた熱さが頭の中に直に伝わる。
そこで今度こそ意識は覚醒した。慌てて目を見開き、バッと勢いよく身を起こす。
「わっ」
俺が飛び起きたと同時に小さな悲鳴が聞こえ、声のした方へと素早く視線を向ける。思わず射抜くような冷たい視線になってしまったのは許してほしい。敵かもしれない、と回り切らない頭は叫んでいたのだ。
しかしそこにいたのは、一見無害そうなまだ若い女。洗面器らしいものを手にした彼女は驚いた表情でこちらを見ていた。
お互い何も口にすることなく、しばらく見つめ合う。
「き」
「怪我人は大人しく寝ててください」
数秒の沈黙の後、君は何者だと問おうとした言葉は女の声に遮られる。
彼女はそれから俺の座るベットに近づき包帯やら何やらを準備しだした。……こちらを全く気にすることなく。
仕方なく開いた口を閉じて、言われた通りにベットの中に戻り横たわる。
勘違いして欲しくないが、決して警戒を怠った訳ではない。彼女の俺への近づき方やこちらの動きを全く気にしていない態度………見るからに素人のそれだ。
体は素直で、実際身を起こすのもきつい状態だった俺の体は、そう判断すると力を抜いた。
「………君は、なんなんだ」
だいぶ意味合いは変わったが、さっき聞きたかったことを口にする。
すると女は少し怪訝な顔をして俺を見た後、数秒考えてから、口を開いた。
「名前は雨宮千尋といい、ここで診療所を開いています。
貴方が路地裏で倒れていたところを見つけ、何故か救急車を呼ぶ事も病院へ連れて行く事も嫌がられたので仕方なくここに運びました」
淡々と抑揚のない声で告げられた言葉には少し棘があった。
「色々気になる事もありますが………とりあえず、貴方はその酷い怪我を治してください。」
そう言って彼女は俺の腹に巻かれていた包帯に手をかけた。
解けたそれは元は真っ白だったろうに、今は真っ赤に染まりきっていた。それを触る彼女の白い手は微かに震えている。
こんな得体も知れない男を手当てするなど、“普通”なら怖くて仕方ないだろうに、何故…こんなに震えてまで……。
強いのか弱いのかよく分からない女、それが俺の『雨宮千尋』に対する最初の印象だった。
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てる(プロフ) - __ne_mU_さん» ありがとうございます!更新のんびり過ぎますがお付き合いくださると嬉しいです! (2019年10月14日 22時) (レス) id: 1a0e49df6a (このIDを非表示/違反報告)
__ne_mU_(プロフ) - 前作を今日初めて読み夢中でこちらまできちゃいました!降谷さんかっこいい、、すき、、更新楽しみにしてます! (2018年12月15日 21時) (レス) id: 4f8346dfa1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:てる | 作成日時:2018年12月13日 0時