＊第１３１話＊ ページ8
「……理由をお聞かせ願います」
カインの言葉に特別驚いた様子もないエルナは、静かに口を開いた。
その背後ではメラが強く手を握り震えているのが目に入る。
カインはその様子を一瞥し、エルナに視線を戻す。
「ここから1番近い村…エドマンズを其方達は知っておるか？」
カインの問いに首を横に振るエルナ。
「先月の話だ。その村で大きな災害が起こった。多くの民達が命を落とし、家を失い、作物も育てることが出来ず、飢えに苦しんでいる」
「…その民達に、お悔やみとお見舞い申し上げます。ですが、それと今回の命に何か関係がおありで？」
「その時、不思議なものを見たと言う奴がいる。…緑色の髪をした女だった、と。
妖しげな言葉を発しており、何やら魔法のようなものを使っていたと」
その言葉を聞いて、エルナもメラも察しがついたのだろう。ピクリと眉が動いた。
「どうやら貴女方と似たような容姿をしている…私も昔聞いた話ですが、ここらには“魔女”と呼ばれる者がいるとか？…貴女方のことでしょうか？」
落ち着いた声だったが、どこか棘のある言葉にエルナ以外の女達は怒りを覚えた。
エルナはただその言葉を静かに聞き、終わると同時に目を閉じた。
…そして、再び開けられた目は元の金色に戻っていた。
「確かに我々は魔女と恐れられていた存在。ですがそれは昔の話。
こうして森の奥深くで暮らしています故、その村に立ち入ったことは一度もありません。人違いでしょう。
……それに、私達はそのような悪虐な術など使えません」
静かで、いつもと変わらない優しい声だった。
その言葉に眉をひそめるカイン。
「ですから、私達がここを離れなくてはいけない理由は存在し得ない。どうぞ、お帰りください」
真っ直ぐとカインを見つめるエルナ。
そこには揺らぐことのない意思がこもっていた。
「ここはクラリネスの領土であり、私に逆らうことは反逆罪であるが？」
「貴方達が領土争いなど馬鹿げたことをしている遥か前から、私達はここで暮らしております。
後から来たのは貴方がたです」
「先住民族であるか」
「いいえ、一つの国です」
一触即発しそうな雰囲気が漂う。両者とも譲る気配がない。
…仕方がないか。そうカインが呟いた時、兵士達が一斉に煙玉のようなものを投げ込んだ。
「これはっ…」
エルナは即座に戦闘の合図を出す。しかし、それはもう遅かった。
煙は周辺一帯に濃く立ち上っていた。
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てる(プロフ) - 響さん» 響さん！コメント毎回ありがとうございます！すごく励みになっております！駄作な文章ですが楽しんでいただけてなによりです！ありがとうございます！ (2018年12月11日 23時) (
レス) id: 1a0e49df6a (このIDを非表示/違反報告)
響(プロフ) - 診療所へようこそ、から来ました。てるさんの作品すごく好きです、、、つい一気読みしてしまいました！！切なくて、でも最後はハッピーエンドですごく素敵な作品でした、ありがとうございます…！！！！ (2018年12月10日 22時) (レス) id: 3701a0a282 (このIDを非表示/違反報告)
てる(プロフ) - 肴さん» そう言っていただきとても嬉しいです！ありがとうございます！ (2018年6月10日 12時) (レス) id: 1a0e49df6a (このIDを非表示/違反報告)
肴(プロフ) - 最初からすごく好きでずっと読んでました！！！事情によりコメントも投票もお気に入り追加もできなかったですが本当に感動しました！！ (2018年6月8日 19時) (レス) id: b8d7cc9c7d (このIDを非表示/違反報告)
てる(プロフ) - anao10さん» 長々と続いてしまったのに、最後までありがとうございました！読んでくださる方が居てくれるからこそ、とても楽しく書くことが出来ました！あまり納得できない最終話だったので、後日談書くかも知れません(笑)その時はまた読みに来てください〜 (2018年4月3日 20時) (レス) id: 1a0e49df6a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：てる | 作成日時：2016年11月2日 21時
