＊第１２９話＊ ページ6
エルナの予言のような一言は、このことを言っていたのかもしれない。
その日、空は曇り空だった。
いまにも雨が降りそうな中、一つの軍隊が森の中へと足を踏み入れる。
彼らが向かう先にはサディル族の住む地帯が広がっていた。
「エルナ様！やはり人間達は軍勢を向かわせてきました」
見張りの1人がエルナの前でそう叫んだ。
その声を聞いていたエルナ以外の女達は皆、顔を強張らせる。
エルナの膝にちょこんと座っていたアトリアもその1人だった。
その言葉の意味はよくわからなかったものの、よくない事が起こっている…とだけは幼いながらに感じた。
「皆、森の周囲に散らばり、人間達を囲むのです。手を出してはいけませんよ。
彼らは私達と同じ言葉を使う、分かり合える存在です。殺し合いなど、私達の志に背くような事、してはいけません」
「承知いたしました！」
エルナの言葉に声を揃えて女達は返事をした。それぞれが散らばっていくのを見ながら、エルナはダリアを呼んだ。
「ダリア、もしもの事があったらこの子を頼むわ」
そう言ってエルナがダリアの前に差し出したのは、まだ幼い子供達とアトリアだった。
「承知いたしました、エルナ様。ですが…エルナ様達は…」
「心配はいらないわ。私達には神のご加護が付いているもの…この力を使う者として、一族の長として、ちゃんと皆を守るわ」
「…どうかご無事で」
エルナから目を逸らさずに、ダリアはそう答えた。一族の長として、娘を手放さないといけないエルナの心中を思ったら涙が出そうだった。
それを、ダリアは必死に隠した。
「ねぇ、母様…母様は一緒に来れないの…？」
「ええ。ごめんなさいね。アトリア」
泣きそうな顔で微笑む母を見て、アトリアは何故か恐怖を感じた。
ぎゅっとエルナの服を掴む。
「嫌だ…母様と一緒に。母様も一緒に行かないと、嫌だ！」
「姫様…」
しがみつく娘の頭をエルナはそっと撫でる。
「アトリア。貴女が生まれてきてくれて本当に幸せだったわ……。
貴女が生まれてきてくれなきゃ知ることの出来なかった幸せがいっぱいあった。
ありがとう…アトリア」
「母様…？」
「だから、最後に母親らしく、貴女を守らせてちょうだい。
貴女は私達の希望よ。貴女さえ居れば私達は再び出会える。
だから、貴女は……生きてね。私の可愛い“アトリア”」
「か…あさまぁ…」
「愛しているわ」
優しく歌うような声。そんな母の声にアトリアはただ涙を流すことしかできなかった。
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てる(プロフ) - 響さん» 響さん！コメント毎回ありがとうございます！すごく励みになっております！駄作な文章ですが楽しんでいただけてなによりです！ありがとうございます！ (2018年12月11日 23時) (
レス) id: 1a0e49df6a (このIDを非表示/違反報告)
響(プロフ) - 診療所へようこそ、から来ました。てるさんの作品すごく好きです、、、つい一気読みしてしまいました！！切なくて、でも最後はハッピーエンドですごく素敵な作品でした、ありがとうございます…！！！！ (2018年12月10日 22時) (レス) id: 3701a0a282 (このIDを非表示/違反報告)
てる(プロフ) - 肴さん» そう言っていただきとても嬉しいです！ありがとうございます！ (2018年6月10日 12時) (レス) id: 1a0e49df6a (このIDを非表示/違反報告)
肴(プロフ) - 最初からすごく好きでずっと読んでました！！！事情によりコメントも投票もお気に入り追加もできなかったですが本当に感動しました！！ (2018年6月8日 19時) (レス) id: b8d7cc9c7d (このIDを非表示/違反報告)
てる(プロフ) - anao10さん» 長々と続いてしまったのに、最後までありがとうございました！読んでくださる方が居てくれるからこそ、とても楽しく書くことが出来ました！あまり納得できない最終話だったので、後日談書くかも知れません(笑)その時はまた読みに来てください〜 (2018年4月3日 20時) (レス) id: 1a0e49df6a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：てる | 作成日時：2016年11月2日 21時
