＊第１６０話＊ ハンカチ ページ37
それから約半年間。
色々と試した。
最初のうちは、街を歩いてまわった。
時々知り合いの顔を見つけ、近くを通ってみたりするが、思い出すどころか、興味さえ持たれない。
こうして歩いてみることで分かったことがある。
“私から行動しない限り、誰もこちらに気づかない”ということ。
人、1人のの命を蘇らせたのだから、その代償もきっと命なのだろう。
確かに私は、死んだも同然……独りだけの世界にいる。
けれど、『まだ』死んではない。
希望は捨てられなかった。
、
ある日、白雪ちゃん達に会った。
リュウ君とオビと3人で買い物に来ていたのだろう。
その元気な姿を見て安心する一方、私の胸は大きく波打っていた。
とりあえずは、何かきっかけを。
あっちから歩いてくる白雪ちゃん達に近づく。
そしてすれ違う瞬間、持っていたハンカチを落とした。
この方法は、前にも知り合いの衛兵達とすれ違うときにも試したが、
普段なら拾ってくれる兵達は、落ちたハンカチにも私にも気づくことなく素通りだった。
だから、今度もダメ元で、でも少しの期待を胸にやってみる。
ハンカチを落としたまま何事も無かったようにその場から離れる。
1歩…2歩……3歩。
踏み出す足が震えそうだった。
少し離れても、声がかかることはない。
やっぱり駄目なんだ……。
そう、心の中でため息を吐いた時だった。
「お姉さん」
前にも同じようにそう私を呼んでいた彼の声が、
久しぶりに聞くその声が、とても……とても、懐かしくて、
泣きそうになった。
振り向けずにいると、くるりと回り込んで、声の主は私の前に立つ。
「これ、落としましたよ？お姉さんのでしょ？」
白いレースのハンカチが目の前に差し出される。
震える手でそれを受け取ると、オビはそれじゃあ。と言って、白雪ちゃん達の方へと歩き出した。
「っ、オビっ……」
慌てて振り返ったそこには、もう……彼の姿はなかった。
、
次の日。街を歩き回って彼の姿を探した。
やっと見つけたそこへ、胸を高鳴らせながら近づいていき、
声をかける。
「昨日はハンカチを拾ってくれて、ありがとう」
そうお礼を言うと、彼はキョトンとした顔をした後、困ったように眉を寄せた。
「あー……ごめんね、お姉さん。
多分それ拾ったの俺じゃないよ」
そんなことしてない。そう言う彼に、私は何も言うことが出来なかった。
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てる(プロフ) - 響さん» 響さん！コメント毎回ありがとうございます！すごく励みになっております！駄作な文章ですが楽しんでいただけてなによりです！ありがとうございます！ (2018年12月11日 23時) (
レス) id: 1a0e49df6a (このIDを非表示/違反報告)
響(プロフ) - 診療所へようこそ、から来ました。てるさんの作品すごく好きです、、、つい一気読みしてしまいました！！切なくて、でも最後はハッピーエンドですごく素敵な作品でした、ありがとうございます…！！！！ (2018年12月10日 22時) (レス) id: 3701a0a282 (このIDを非表示/違反報告)
てる(プロフ) - 肴さん» そう言っていただきとても嬉しいです！ありがとうございます！ (2018年6月10日 12時) (レス) id: 1a0e49df6a (このIDを非表示/違反報告)
肴(プロフ) - 最初からすごく好きでずっと読んでました！！！事情によりコメントも投票もお気に入り追加もできなかったですが本当に感動しました！！ (2018年6月8日 19時) (レス) id: b8d7cc9c7d (このIDを非表示/違反報告)
てる(プロフ) - anao10さん» 長々と続いてしまったのに、最後までありがとうございました！読んでくださる方が居てくれるからこそ、とても楽しく書くことが出来ました！あまり納得できない最終話だったので、後日談書くかも知れません(笑)その時はまた読みに来てください〜 (2018年4月3日 20時) (レス) id: 1a0e49df6a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：てる | 作成日時：2016年11月2日 21時
