＊第１３６話＊ ただ貴女の側に ページ13
どうして…か…
Aの言葉が、朦朧とした意識の中に響く。
国のために今まで隠してきた。…いや、それだけではないのは、もうわかっている。
『イザナ…お前に頼んだ』
小さい頃から呪いの言葉のように繰り返されてきた、父上の声も聞こえてきた。
国のために、俺がやるしかなかった。
しかし、心というものはどうも上手くいかないもので。
駄目だと言い聞かせるほど、それは美しく…
遠ざけようとするほど、それは愛おしく…
剣を握ってみると、手が震え、涙が零れた。
俺には、眼の前で静かに安心しきった顔で寝ているお前を…手に掛けることなんて出来なかった。
＿＿＿俺にお前を殺すことなど出来ない。＿＿＿
それが、俺の“答え”だ。
どんなに国のため、国民のためだといえ、
王子としての、この国の王となる為に生まれてきた俺の、責任だと言っても。
『イザナ…。………好きよ』
何も知らずに無邪気に微笑みかけるお前を、俺はどうしようもないくらいに、
愛してしまった。
、
「っ…どうしてよ……ねぇ…」
ハッと現実に戻ると、今にも泣きそうな顔で俺を睨むAが目の前にいた。
俺の顔のすぐ側に垂れていた緑色の美しい髪を、まだ残った腕ですくいとる。
「…綺麗……だ…な…」
そう呟くと、目の前で、赤い瞳が大きく開いて揺らいだ。
「何を…言って……」
「……何度も、何度も…剣を握ったさ。
お前が思い出す前に……お前を殺すために」
お前を俺の部屋に呼んだ夜。…俺は剣を手にしていた。お前を斬ろうとしていた。
なのに、その晩、お前は俺に“好きだ”と言った。
…俺はお前を殺そうとしていたというのに。
「斬らなければならなかった……なのに、俺はお前が、愛おしくてたまらなかった」
「っ……」
「謝るつもりも、許してもらえるつもりもない。
だが、もう二度と嘘はつかないさ…」
「あんた…どういうっ……」
うっすらと滲んでいる雫をそっ…と静かに拭う。
そろそろ…意識が遠のいていく音がする。
「どうして…お前に伝えなかったか……か…」
国のため。父上のため。国民のため…ゼンのため………
、
いや。
どれも違う。
、
「…俺は……ただ、お前に隣で笑っていてほしかった…だけ、だ…」
そう、あの頃のように…
何も知らない無邪気な笑顔で。
「ただ…それだけだ」
ただ、笑っていてほしかった。
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てる(プロフ) - 響さん» 響さん！コメント毎回ありがとうございます！すごく励みになっております！駄作な文章ですが楽しんでいただけてなによりです！ありがとうございます！ (2018年12月11日 23時) (
レス) id: 1a0e49df6a (このIDを非表示/違反報告)
響(プロフ) - 診療所へようこそ、から来ました。てるさんの作品すごく好きです、、、つい一気読みしてしまいました！！切なくて、でも最後はハッピーエンドですごく素敵な作品でした、ありがとうございます…！！！！ (2018年12月10日 22時) (レス) id: 3701a0a282 (このIDを非表示/違反報告)
てる(プロフ) - 肴さん» そう言っていただきとても嬉しいです！ありがとうございます！ (2018年6月10日 12時) (レス) id: 1a0e49df6a (このIDを非表示/違反報告)
肴(プロフ) - 最初からすごく好きでずっと読んでました！！！事情によりコメントも投票もお気に入り追加もできなかったですが本当に感動しました！！ (2018年6月8日 19時) (レス) id: b8d7cc9c7d (このIDを非表示/違反報告)
てる(プロフ) - anao10さん» 長々と続いてしまったのに、最後までありがとうございました！読んでくださる方が居てくれるからこそ、とても楽しく書くことが出来ました！あまり納得できない最終話だったので、後日談書くかも知れません(笑)その時はまた読みに来てください〜 (2018年4月3日 20時) (レス) id: 1a0e49df6a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：てる | 作成日時：2016年11月2日 21時
