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「…どう？」
阿部先生お得意の上目遣いでじっと見つめられる。
女子たちはこのあざとい行動にメロメロらしいが、残念ながら俺には魅力が分からない。
ただ、この感じだと拒否権もなさそうなので仕方なく引き受けることにした。
「はぁ…分かりました、やりますよ…」
「…ほんとに？良かった〜！本高に頼んで正解だったよ！」
そう言って先生に手を掴まれてぶんぶんと振り回される。
1部の女子が何故かざわざわし始めるから少しだけ鬱陶しいが、今日から俺は先生(仮)になってしまったらしい。
先生の方を見ると「もちろん今学期の成績は期待してくれていいからな？」とぎこちないウインクを飛ばされた。
どうせならそのぎこちないウインクは俺じゃなくて女子にお見舞してあげたらどうだろうか。俺に向かってそんなことされても反応に困るだけだ。
「あ、じゃあ先生これから授業だから！放課後よろしくな！」
「え、ちょっと！」
そのまま先生は忙しそうに教室から出ていってしまった。
話の流れが早すぎて呆然としている俺をクラスメイトは冷たい目で見ていた。
ここまで無慈悲な人間しかいないこのクラスはある意味すごいと思う。
「はぁ…」
「…でっかい溜息」
「…はぁ？」
自分の席に戻ると思わずため息がこぼれた。
自分は生徒会長でありながら先生の雑用を任されてどうするんだ。
まず卒業出来ないならこんな偏差値の高い高校に入らなければいい話なのに。
なんてことを考えながらもう一度大きなため息をつくと、隣で寝ているはずの佐々木がまるで面白いものを見ているかのような目で俺の事を見ていた。
「お前に何が分かるんだよ…ていうか俺が今こうなってるのもお前のせいだし」
「生徒会長もお前とか言うんだね」
「…あっ」
ただでさえイライラしているというのにその原因である佐々木が呑気に俺の方を見ているから、つい心の声が出てしまった。
周りの人間には聞こえていないようだけど、いつもと違う俺を見た佐々木は1度目を丸くしたあとまた先程と同じような笑顔に戻った。
「ふーん、生徒会長も裏表ある感じ？」
「お前ほどではないだろうけどな」
「…私は裏を隠すつもりもないし、生徒会長とはちょっと違うかな」
訳の分からないことを言い残した佐々木はまた机に突っ伏してしまった。今度は本当に寝たようで肩を叩いても反応はなかった。
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作者名：浅漬け | 作成日時：2020年5月25日 17時
