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兄「ブラック本丸に就任したんだろ。数ヶ月経つというのに、今でも自分の素性を明かせない者達と暮らして、辛くないか」
兄のいう素性とはきっと、性別や鶴丸国永が奉納されている神社にて生まれ育ったことを指しているのだろう。
『辛くないよ。皆、根はちゃんといい人達だし。』
この部屋の空気に耐えられず、花見の会場となる庭へ私は歩き始めた。
兄「…兄として、心配で仕方ないんだ。俺は就任と同時に新しい本丸を与えられた身、Aの辛さをわかってやれない」
兄も私に続いて庭へ向かう。
兄の表情は歪んでいた、悔しそうな、私を心から心配してくれている顔だ。
『あは、他人事でそんな顔しないでよ。でも本音は、ちょっと辛い。お風呂も夜中に入らなきゃだし、性別がバレたら刀剣男士との関係が崩れるどころか、殺されるかもしれない』
兄の表情が更に歪んだ。
しかし私は続けた。
『でも、彼らをきちんと信頼してるし、何より皆のこと大好きだから。辛い時もあるけど、毎日楽しくてしょうがないの。…元ブラック本丸の刀とは思えないほど楽しそうに、綺麗に笑うんだよ』
あの本丸に就任してからの数ヶ月を思い出し、本音で話した。
するとさっきまでの兄の表情は何処へやら、満面の笑みへ変わった。
兄「うん、心配なさそう…か。辛いことがあったら、この本丸に逃げてこいよ!俺も鶴丸も、他の皆も大歓迎だからな」
はりきったように言う兄の後ろの木の陰に、隠れているつもり…かもしれないけれど鶴丸国永がいた。
抱きしめてくれた時、私の独り言に気がつかないフリをしてくれたから、私も気がつかないフリをした。
『…私、本丸に帰らなきゃ。お兄ちゃんに話してたら何だか皆に会いたくて…申し訳ないけど花見は今度、またメール送って!…てか男装しなきゃだからさっきの審神者部屋借りる!着替えたら帰る!!そういうことでお願い!』
兄「ははっ、流石俺の妹なだけあって騒がしいな」
兄が苦笑しながら呟いたのを聞き流して、私は着替えをしに審神者部屋へ戻った。
この時の私は、気がついていなかった。
兄も木の陰にいた鶴丸国永も、誰も気がついていなかっただろう。
「は、やく、本丸の奴らに…知らせねえと…」
そう言って、門からこちらを覗く人影に。
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テラリウム(プロフ) - みなつきさん» 返信大変遅くなりました。好きと言って頂けてとても嬉しいです、完結までお付き合い頂き有難うございました! (2019年3月24日 2時) (レス) id: df9ed6c4dd (このIDを非表示/違反報告)
みなつき(プロフ) - 続編ありがとうございます!!このお話、とっても好きだったので!うれしいです! (2018年3月31日 17時) (レス) id: e9d1f159c4 (このIDを非表示/違反報告)
テラリウム(プロフ) - クルトンさん» コメント有難うございます!終わり…なんです(;_;)次回作、少し間が空くとは思いますが書くつもりでいるので、お待ちください(^^) (2018年3月29日 8時) (レス) id: 20aaa1ddde (このIDを非表示/違反報告)
クルトン(プロフ) - お、終わり....何ですかぁぁぁ!スッっっごく面白かったです!次も....作品作りますよね!?いや、作ってください!!これからも応援してます! (2018年3月28日 16時) (レス) id: 4cc1bb6772 (このIDを非表示/違反報告)
テラリウム(プロフ) - みなつきさん» コメント有難うございます!そのように言っていただけて、とても嬉しいです。完結までもう少しお付き合い下さい^^ (2018年3月27日 13時) (レス) id: 20aaa1ddde (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:テラリウム | 作成日時:2017年11月5日 19時