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目を開けると、私は横になっていた。


そうだ、あのまま寝てしまったのだった。


しかし柱に寄りかかって寝たはずなのに、私と薬研は畳の上で寝ていて、お腹のあたりには薄い毛布がかけられていた。


ゆっくり起き上がると、私の横には書物を読む一期一振がいた。


『一期一振…これ、かけてくれたのか?』


私は毛布を指さして問いた。


「ええ、貴方のためではありません、薬研が風邪を引かないようにです」


『そうか、有難うな』


嫌味を言ったはずの一期一振は、私の返しに眉を歪めた。


私はそれに構わず、話を切り出した。


『薬研から前任の事を聞いたんだ。大事な弟に辛いことを思い出させてしまった、すまなかった。……審神者を嫌う理由が良くわかった。』


まずは弟を泣かせてしまったことを謝るべきだろう。


しかし、その後の私の言葉が癇に障ったようで、


「…っ、貴方に何がわかるか!!?自分の身体は好いてもいない女に性処理の道具として使われ、兄として何も出来ずに弟達が折れていった私の何がわかる!!!?」


彼は怒り、私の胸元を掴んだ。


首が締まり、少し息苦しい。


だが、私は話を続けた。


『審神者を嫌う理由がわかっただけだ、一期一振が受けた痛みは私には到底わからない。だが私は神に誓ってそんな事はしない、神との約束がどれだけ重いかは、よく知っているだろう?』


私の胸元を掴む手が緩んだ。


今が和解のチャンスだと思った。


「…」


『辛かったな』


私は一期一振の頭を撫でた。


普段撫でる方の立場であろう一期一振は、される側は慣れてないだろうと思った。


満更でもなかったようで、彼は少し俯いた。


「…私は貴方に酷いことを言った、冷たく当たった。嫌われて当然の私に何故優しくできるのですか」


俯いたまま、一期一振は私に問いた。


『愚問だな。そもそも私は一期一振のこと嫌いじゃない、むしろ好きだ。全部弟達を想っての行動なのはわかっている…そうだろう?皆に慕われるいち兄?』


私の言葉を聞き、一期一振は目を丸くした。


「…はは、貴方は全てわかっていらっしゃるんですね。そこまで言われては貴方を主と認めざるを得ない。」


そう言って初めて見た彼の笑顔は、とても輝いていて素直に綺麗だと思った。

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テラリウム(プロフ) - みなつきさん» 返信大変遅くなりました。好きと言って頂けてとても嬉しいです、完結までお付き合い頂き有難うございました! (2019年3月24日 2時) (レス) id: df9ed6c4dd (このIDを非表示/違反報告)
みなつき(プロフ) - 続編ありがとうございます!!このお話、とっても好きだったので!うれしいです! (2018年3月31日 17時) (レス) id: e9d1f159c4 (このIDを非表示/違反報告)
テラリウム(プロフ) - クルトンさん» コメント有難うございます!終わり…なんです(;_;)次回作、少し間が空くとは思いますが書くつもりでいるので、お待ちください(^^) (2018年3月29日 8時) (レス) id: 20aaa1ddde (このIDを非表示/違反報告)
クルトン(プロフ) - お、終わり....何ですかぁぁぁ!スッっっごく面白かったです!次も....作品作りますよね!?いや、作ってください!!これからも応援してます! (2018年3月28日 16時) (レス) id: 4cc1bb6772 (このIDを非表示/違反報告)
テラリウム(プロフ) - みなつきさん» コメント有難うございます!そのように言っていただけて、とても嬉しいです。完結までもう少しお付き合い下さい^^ (2018年3月27日 13時) (レス) id: 20aaa1ddde (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:テラリウム | 作成日時:2017年11月5日 19時

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