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「…智くん、」
歯を磨いて
風呂に入って
髪を乾かして
どこかボーッとしながら今が現実だと確信できるものを探したけど見つからない。
「ここが現実だよ」と言われ
「はい、そうですか」と簡単に返事できるわけない。
あの1年間。
酷な決断をして、最愛の女を殺され
代わりに家にやってきた汐音を0から育てた。
子育てなんて分からないままパパをやった。
何もかも投げ出したくなった。
会いたいのに会えなかった1年間。
あっちの世界ではこの日風呂に入れなかった。
ずっと病院にいた。
突然突きつけられた死の選択を迫られ恐怖に怯えていた。
でも今は、この世界には、Aがいる。
普段通りのカズもいる。
汐音はまだ生まれてない。
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あっちの世界での歴史をこっちの世界で変えた。
Aは倒れていない。
寝る準備が整っている。
「智くん、」
「私は生きてるからね」
分かってる。
分かってる。
今欲しいのはここが現実っていう確証と
二度とあっちの世界に飛ぶことはない保証。
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ぶっちゃけ眠くないけど明日は仕事らしい。
寝ようとすると、Aがパジャマをツンツンと引っ張ってきた。
「おやすみのチューは」
ああ、そっか。
ずっとやってなかったからそんな習慣も忘れてた。
Aの味、感触、柔らかさ。
久しぶりだ。
智「…早く抱きたい」
「も少しだけ待って」
ずっとお預けを食らってる身。
しばらくコンビニに行くのは避けよ。
「ん…、赤ちゃん潰れちゃう…」
思いっきり抱きしめたらAの腹も圧迫したから怒られた。
大丈夫だよ、汐音は強い女だから。
よく遊んでよく泣くから。
プリンが大好きだから。
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Aが倒れないよう、無理をさせないよう会社の奴らに言付け、俺は俺の仕事をした。
6週間後、Aが病院へ運ばれたと知らせを受け俺も向かった。
この瞬間が嫌だ。
あの日と同じ病院。
隣にカズはいない。
分娩室からガキの泣き声が聞こえてきた。
心臓が止まりそうになる。
病室に行くと、看護師が抱いてる汐音の頬へ指を滑らせるAがいた。
「智く…生まれた…！」
抱っこしてあげろと看護師から手渡される。
顔、変わんねぇな。
顔を真っ赤にして泣く汐音。
似合わないと笑うA。
俺、お前より抱っこすんの上手いからな？
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女医が口を開く。
母子共に健康だって。
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チェリー(プロフ) - 汐音ちゃんがどんな風に育つのかがとっても気になります！この作品はお山のてっぺんから見させていただいていて、他にも、ふたまたさとしなども、本当に大好きな作品です！！また、ちおさんの作品まってます！長編作、お疲れさまでございました！！ (2018年3月10日 10時) (
レス) id: a0fb27e534 (このIDを非表示/違反報告)
チェリー(プロフ) - 完結おめでとうございます！！んもーーーーー、本当に！良かった！！の一言です笑 主人公が亡くなってしまってからの智くんの気持ちが痛いほど伝わる書き方、本当に素晴らしいなと思いました！夢で良かった。本当に。 (2018年3月10日 10時) (レス) id: a0fb27e534 (このIDを非表示/違反報告)
ちお(プロフ) - うぴさん» 夢でした！夢の中で得た経験を現実世界でも発揮してくれると思います(^^) (2018年3月9日 16時) (レス) id: 06dd6ecca4 (このIDを非表示/違反報告)
ちお(プロフ) - ちはるさん» ファンだなんて…嬉しいお言葉をありがとうございます！今回の更新で完結となりました。最後まで読んで頂けると幸いです。 (2018年3月9日 16時) (レス) id: 06dd6ecca4 (このIDを非表示/違反報告)
ちお(プロフ) - すりおろし梨。さん» 智くん自身、未だに現実と夢の区別がつかなくなることもあるみたいですが…、夢というオチでした(^^) (2018年3月9日 16時) (レス) id: 06dd6ecca4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ちお
| 作成日時：2017年12月30日 17時
